昨年度はマウス左前下行枝結紮モデルによる梗塞後心筋においてTim44の発現が減少すること、培養心筋細胞に対してRNA干渉法を用いたTim44のノックダウンはコントロールと比較して過酸化水素投与下で酸化ストレスマーカーであるカルボニル化タンパクを増加し、心筋細胞死を増悪することを確認した。本年度はTim44のheterozygous KOマウスを用いて心筋梗塞後リモデリングにおけるTim44の役割の解明を行った。Tim44のheterozygous KOマウスはベースラインで左室拡張末期径、左室駆出率および心重量に差はなかった。しかし、冠動脈左前行枝結紮モデルではTim44のheterozygous KOはwild typeと比較して左室拡張末期径の拡大し、左室駆出率低下および心重量を増加させた。ウエスタンブロット法による解析ではTim44のheterozygous KOはWild typeと比較し、カルボニル化タンパクを増加させcleaved caspase3を増加させた。また心筋細胞に対してアデノウイルスを用いたTim44の過剰発現は過酸化水素によるカルボニル化タンパクの増加およびcleaved caspase3を減少した。加えて、心筋細胞に対するTim44の過剰発現は過酸化水素刺激によるTUNEL陽性細胞数の増加を抑制し、心筋細胞死を抑制した。以上の結果から、梗塞後心筋においてTim44の低下は心筋細胞死を介して心筋リモデリング増悪に関与する可能性、およびTim44は梗塞後心筋リモデリングに対する新規治療ターゲットになりうる可能性が示唆された。
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