研究課題/領域番号 |
21K16030
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
木谷 友哉 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 専攻医 (30842257)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 多能性幹細胞 / 心不全 |
研究実績の概要 |
本研究では、ヒト多能性幹細胞より心臓構成細胞を作出し、CRISPR/Cas9システムを用いた遺伝子ノックアウトスクリーニングを行い、拡張不全型心不全の病態に寄与する遺伝子の候補を探索することで、新規治療標的となりうる分子生物学的機序を明らかにすることを目的して研究を実施した。 ヒトiPS細胞から心筋細胞を誘導し、さらに幼弱心筋細胞の増殖を引き起こすことで大量の心筋細胞を作出することに成功した。これらのヒト心筋細胞を用いて、NT-ProBNPを心不全に関連する心筋細胞の表現型として実施した全キナーゼを標的としたCRIPSRノックアウトスクリーニングを実施した。計4回のスクリーニングを実施し、拡張不全型心不全の病態形成に関与が疑われる遺伝子候補の同定に成功した。興味深いことにこれらの遺伝子にはこれまで心不全の発症に関与が報告されていない遺伝子も含まれていたことから、引き続き候補遺伝子の詳細な評価を継続するとともに、他の細胞種での検討や全ゲノムスクリーニングを予定している。 また、ヒト心臓線維芽細胞は既存の報告に基づき誘導することは可能であったものの、長期培養により心外膜系譜様細胞への形質転換が認められた。直近では我々と同様の報告もなされていることから、今後ヒト多能性幹細胞由来の心臓線維芽細胞を用いたスクリーニング実験を実施するには、ヒト心臓線維芽細胞の誘導、および培養プロトコールのさらなる最適化が必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト心臓線維芽細胞を用いた検討は難渋しているものの、心筋細胞を用いた遺伝子スクリーニングは実施できており、心不全の病態に関与している可能性の高い遺伝子候補が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
多能性幹細胞より誘導した心臓線維芽細胞を長期にわたり安定して培養を継続できる最適なプロトコールを模索する。また同定した心筋細胞における新規の心不全発症関連遺伝子群に着目し、スクリーニングにて得られた結果の再現性を確認する。有望な標的遺伝子に着目し、引き続き細胞表現型や遺伝子発現の解析を行い、心不全治療標的となりうるか評価を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
心臓線維芽細胞の培養実験に難渋しており、スクリーニング実験を見送ったため残預金が発生した。残金は次年度心臓線維芽細胞の培養条件最適化を検証するために使用する計画をしている。
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