研究実績の概要 |
単離したラット新生仔心筋細胞に対し、βアレスチン偏向性受容体であるCXCR7の特異的アゴニストTC14012と、β1アドレナリン受容体Gαs経路を活性化させる代表的なリガンドであるノルエピネフリンとで刺激し、遺伝子発現の変化をRNAseqを用いて解析し、vehicleと合わせて3群で比較した。ノルエピネフリン刺激では、GO解析の結果、Gαs経路やERKと関連した遺伝子発現の変化が認められた。一方で、TC14012刺激では、細胞骨格に関わるCcdc63, ミトコンドリア代謝に関わるSlc25a22等の遺伝子発現の変化を認めたが、GO解析で有意な遺伝子発現変化のあるpathwayを見出すことはできなかった。原因として、今までの研究でCXCR7は虚血下で保護的に働くことが見出されており、正常状態での心筋細胞に対しての作用がそもそも少ないことが示唆された。そこで低酸素チャンバーを用いて、心筋細胞に低酸素刺激を行うモデルを作成した。特に注目しているアポトーシス誘導を行う条件を検討している。またマウス心筋梗塞モデルでのアポトーシス誘導を、TUNEL染色等用いて時間経過を追っている。 今回の研究期間を通して、研究の発端となった「ケモカイン受容体CXCR7が心筋梗塞後の心拡大や収縮能低下に対し保護的に働いている」点の機序を解明するために、心筋細胞に対するCXCR7刺激の効果をRNAseqを用いて網羅的に解析したが、有意なpathwayの発見には至らなかった。今後は、特に虚血という条件下に絞って、細胞モデル、マウス心筋梗塞モデルの両方からの探索を進める方針である。
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