研究課題/領域番号 |
21K16055
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
坂田 憲祐 滋賀医科大学, 医学部, 客員助教 (50773991)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 不整脈 / 心房細動 / 非発作性心房細動 / カテーテルアブレーション / コンピュータシミュレーション / 心臓電気生理学 / ローター / 心筋線維化 |
研究実績の概要 |
非発作性心房細動においては,ローターとよばれる駆動的役割を果たす機能的リエントリーを含む非受動的興奮波動態が持続メカニズムの一つとして推察されている.すでに研究代表者らが開発に成功しているオンライン・リアルタイム臨床不整脈映像化システム(ExTRa Mapping)を用いることで,ローターの特徴および存在確率や定在性・局在性,また患者ごとの興奮波動態の違いを解析し,さらにはそれらについて心筋モデルを用いたコンピュータシミュレーション実験を行なって検証することで持続メカニズムを明らかにし,最適な治療戦略を開拓するために本研究を進めた. 本研究の初年度である令和3年度には,臨床では年間約300例近い心房細動カテーテルアブレーション症例を担当・経験した.主に非発作性心房細動アブレーション症例において持続メカニズムと考えられる旋回興奮について,術中の心内心電図記録から作成されるExTRa Mappingによる心房細動のリアルタイム映像動画の解析に加え,多電極マッピングカテーテルで記録される心内電位記録の時空間的分散や巣状興奮の観察部位の解析も行い,それらの特徴について調査した.またそれらを標的としたカテーテルアブレーション戦略の長期成績と従来の治療戦略との比較・検証を行い,その効果について報告した.さらにはオーガナイズしたローターの存在確率やそれをターゲットとした再発リスク因子についても調査し,それらに年齢が関与している可能性について報告した.これらの研究成果について,国際学会では米国不整脈学会での発表,国内学会では日本不整脈心電学会学術大会およびカテーテルアブレーション関連秋季大会での発表を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国際学会での発表を目標としていたため,この点については概ね到達できたと考える. しかし,新型コロナウイルス感染症の影響を受け,対面での学会発表や論文共著者との情報共有を十分に行うことができず,論文の投稿には至らなかった.現在既に着手し作成中である.
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度には,まずはこれまで行なったローターの特徴や存在確率,およびそれを標的とした治療戦略の長期成績に関する調査結果についての論文投稿を予定している. そしてそれらのさらなる検証のために,心筋モデルを用いたコンピュータシミュレーションにおいて名高いJohns Hopkins大学Biomedical Engineering学部にてそのスキルを磨き習得する.同大学では臨床での造影MRIデータと心房細動コンピュータシミュレーションモデルを用いて治療戦略をシミュレーションの上,その結果に基づき同大学病院にて実際にカテーテルアブレーションを行い治療効果判定を行なっており,これらの手法の習得およびデータ解析を行うことで,心房線維化やそのパターンとローターの関係,ローターコントロールの最適なアブレーション方法等を解析・検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症による学会の対面開催の自粛に伴い,予定していた米国をはじめとする国際学会ならびに国内学会においての発表形式がオンラインとなったため旅費を一切必要としなかったこと,また年度内に論文投稿にまで至らなかったため英語校閲等の人件費・謝金も一切必要とならなかったことから次年度使用額が生じた. 現在は欧米諸国は現地対面開催を推進しており,日本国内でも水際対策の緩和等今後対面開催となることが推察され,また論文投稿は近日中に可能であると考えられる事から,今後旅費,英語校閲費,論文投稿費等において必要な費用となり,それに使用する予定である.
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