本研究において以下の4点について研究を行った。 (1)健常人iPS細胞(当研究室で作製した細胞株と市販の細胞株)を用いて、一般的に用いられているGSK3阻害剤とWnt阻害剤を用いる心筋分化プロトコールでは、高効率に左室様心筋細胞が誘導されることを確認した。一方、BMP阻害剤を同心筋分化プロトコールに加えることで右室様心筋細胞を高効率に誘導できることを見出した。 (2)健常人由来iPS細胞から誘導した左室様および右室様心筋細胞の性質(細胞サイズ、カルシウムトランジェント、自律拍動頻度、遺伝子発現パターン)を比較検討し、様々な相違点を見出した。 (3)以前に作製していたBrugada症候群患者由来iPS細胞は、臨床的に心室細動発作が確認されていない患者に由来するものであったため、今回、心室細動を繰り返し呈したBrugada症候群患者2名に由来する皮膚線維芽細胞からエピソーマルベクターを用いてiPS細胞を作製した。 (4)Brugada症候群患者由来iPS細胞から左室様および右室様心筋細胞の分化誘導を試みた。細胞株ごとに、細胞播種密度と低分子化合物の濃度の組み合わせを最適化する必要があり、1名の患者由来iPS細胞では右室様心筋細胞の誘導が可能であったが、2名の患者由来iPS細胞から右室様心筋細胞を効率よく誘導するには至っていない。そのため、具体的な解析までは至らず、今後心筋細胞の解析を行う予定である。
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