研究実績の概要 |
申請者は、申請者らは網羅的なGene Trap法を用いて、心筋細胞に特異的に高発現し、細胞質に局在する新規lncRNA Caren (long non-coding RNA Cardiomyocyte-enriched noncoding transcript)を同定した。さらに、lncRNA Carenが、「ミトコンドリア機能の活性化」と「DNA損傷応答活性化の抑制」の作用を介して、心機能の恒常性維持、抗心不全作用を有することを世界に先駆けて見出し、2021年に報告した(Sato, et al. Nat Commun 2021)。さらに、Carenの心機能恒常性維持作用に重要な機能ドメインを同定するために、断片化したCarenを挿入したCaren断片A-EのTgマウスを作製し、機能ドメインの探索を行った。しかし、全てのCaren断片 Tgマウスにおいて心機能恒常性維持作用が認められなかった。一方、全長型Carenを発現するAAV6ベクターを用いた心臓組織に対する全長型Carenの発現補充により、マウス心機能低下が改善することを確認した。以上より、マウスCarenによる心機能恒常性維持作用には、全長Carenの示す高次構造が重要であると考えられた。さらに、データベースから、マウスCarenとヒトCAREN候補は同一遺伝子座に6種類(Transcript1~6)が存在しすることを確認した上で、実際にヒトiPS細胞由来分化心筋細胞においてTranscript1と3が発現することを明らかにした。次いで、Transcript1または3を高発現するTgマウスをそれぞれ作製し、心保護作用を指標にした解析により、Transcript1をヒトCARENと断定した。Transcript1はCarenのヒトホモログと考えられ、新規ヒト心不全治療法の開発へつながる成果が得られた。
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