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ステント留置後早期の生体反応、とりわけ血管治癒において中心的な役割を果たす内皮細胞の早期内皮化様式を明らかにすることは、慢性期における血栓性閉塞のメカニズムを解明する上で極めて重要である。本研究では、2022年度にウサギ大動脈を用いた動物実験を実施し、各種ステント群(ベアメタルステント(BMS)、F-DLCステント(F-DLC)、開発中のNiTi製下肢用Hybrid薬剤溶出性ステント(Hybrid DES))について、それぞれ1羽ずつのウサギに留置後、14日間飼育したのち、各ステントの断面3箇所における病理組織学的評価を行った。 その結果、14日後のステント被覆率は、BMSで88.9%、F-DLCで84.2%、Hybrid DESで61.2%であった。さらに、新生内膜の組織構成には群間で顕著な差異が認められた。BMSではステント周囲に異物反応が明瞭に観察されたのに対し、F-DLCでは異物反応や炎症細胞浸潤がほとんど見られず、平滑筋細胞の成熟および内皮細胞の生着が確認され、血管修復の進行が最も良好であることが示唆された。一方、Hybrid DESでは新生内膜内に未分化な円形の平滑筋細胞が主体であり、この領域において内皮細胞の生着は確認されなかった。 これらの結果から、F-DLCコーティングは異物反応を低減し、平滑筋細胞の成熟を阻害せず、結果として早期内皮化を促進する可能性が示唆された。 なお、2024年度は開発中のHybrid DESステントに関する製品仕様の調整および非臨床試験の評価作業に多くの時間を要したため、当初予定していたウサギを用いた追加の動物実験は実施できなかった。これに伴い、2023年度までに得られたデータを基に知見の整理と考察を行い、今後の成果公表に向けた準備を進めた。
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