超高齢社会を迎えた本邦において、心房細動(AF)は増加の一途を辿っている。病期の初期である発作性AFに対するカテーテルアブレーションによる肺静脈隔離術の有効性と安全性は確立されている。しかしながら、心房筋障害(リモデリング)が進行した持続性AFに対するアブレーション後のAF再発率は高い。研究代表者所属機関は従来から、リモデリングの主因として、メタボリック症候群や心房の心臓周囲脂肪(epicardial adipose tissue: EAT)や心房壁への脂肪浸潤に着眼しており、術前CTで測定されたEAT量はAFアブレーション後の強力な再発因子であることを明らかにしている。しかしながら、術後の食生活や日常活動量によるこれらのパラメータの経時的変化と術後再発の関係は明らかでない。本研究では、術前および術後1年に、体組成計を用いた体組成(体重、筋肉量、脂肪量)、炎症性バイオマーカー、心臓CTのEAT量を測定し、さらに独自の方法により心房壁への脂肪浸潤を推定する。各種パラメータの経時的変化と術後再発を評価することで、術後の生活習慣が再発に及ぼす影響を明らかにすることを目的とする。 本解析により、カテーテルアブレーション後の洞調律維持症例では心房周囲脂肪が減少し、再発例では心房周囲脂肪が増加することを明らかにした。心房筋への脂肪浸潤は、再発の有無に関係はなく、明らかな経時的変化は認められなかった。本研究の結果の一部を、2023年心電図関連春季大会、2023年米国不整脈学会口頭発表、2023年日本不整脈心電学会シンポジウムで報告した。
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