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2022 年度 実施状況報告書

ラミン変異拡張型心筋症の治療候補化合物の探索と薬効機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 21K16082
研究機関東京大学

研究代表者

伊藤 正道  東京大学, 医学部附属病院, 特任助教 (70794642)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード拡張型心筋症 / iPS細胞 / DNA損傷 / LMNA変異 / 創薬
研究実績の概要

本年度は、昨年度から引き続いてLMNA変異拡張型心筋症(DCM)患者から樹立したiPS細胞由来心筋細胞(iPSCM)を用いてDNA損傷マーカーγH2AXの評価を指標とした化合物スクリーニングの実験を継続し、LMNA変異を有する心筋細胞においてDNA損傷の蓄積を軽減する化合物の探索、およびその生体内における効果検証を行った。
まず、昨年度中に実施したスクリーニングの結果同定されたビタミンD2(VD2)が、in vivoのモデルにおいてもDNA損傷の軽減や心機能改善に有効であるかを検討した。当初解析対象としていた、重症なDCMを来すLMNA変異(p.Q353R変異)と相同な変異をノックインしたマウスを作成したところ胎生致死であったため、別のDCMをことが知られているナンセンス変異をノックインしたマウス(p.R225X変異)を作成し解析を行った。このマウスは出生時には大きな異常は認めないが、生後3か月程度で心筋細胞におけるDNA損傷の蓄積と、心機能の低下、心拡大が確認された。このマウスに、生後2か月頃からvitamin Dアナログを8週にわたり腹腔内投与したところ、心筋細胞におけるDNA損傷マーカーの蓄積が抑制され、心機能の低下も抑制されることが判明し、心保護的な効果が確認された。

さらに、構築したスクリーニング系に別の化合物ライブラリーをアプライした。その結果、複数の化合物がヒットし、再現性を検討した結果、CPI1205(ヒストンメチル化酵素阻害剤), WM8104(ヒストンアセチル化酵素阻害剤)等が有用な可能性が示唆された。来年度はスクリーニングを継続するとともに、これらの化合物の薬効解析等を実施する。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

昨年度同定した化合物のin vivoでの機能解析を進め、疾患モデルマウスでも効果があることが示され、臨床的なdrug repositioningのための試験の根拠となるデータを取得した。また、さらに化合物スクリーニングを進め、新たなヒット化合物を2つ新たに同定することができた。以上から本研究計画はある程度順調に進捗していると考える。

今後の研究の推進方策

すでに同定し、in vivoの機能検証を終えたvitamin D2については、臨床的な応用の可能性を探索するため、マウスにおける体内濃度の検証や他のビタミンD受容体アナログの使用を検討する。
新たに同定された2つの化合物については、投薬後の遺伝子発現解析によってそのDNA損傷の蓄積軽減の機序の推定を行う。また、同様に作成したLmna変異マウスに投与することによって、in vivoでの薬効評価を試みる。

次年度使用額が生じた理由

細胞を用いた網羅的遺伝子発現解析の提出を試みたが、納期が年度内に間に合わないために予算を繰り越し、次年度にて解析を行うこととした。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] TEAD1 trapping by the Q353R-Lamin A/C causes dilated cardiomyopathy.2023

    • 著者名/発表者名
      Yamada S, Ko T, Ito M, Sassa T, Nomura S, Okuma H, Sato M, Imasaki T, Kikkawa S, Zhang B, Yamada T, Seki Y, Fujita K, Katoh M, Kubota M, Hatsuse S, Katagiri M, Hayashi H, Hamano M, Takeda N, Morita H, Takada S, Toyoda M, Uchiyama M, Ikeuchi M, Toyooka K, Umezawa A, Yamanishi Y, Nitta R, Aburatani H, Komuro I.
    • 雑誌名

      Science Advances

      巻: 14;9(15) ページ: -

    • DOI

      10.1126/sciadv.ade7047. Epub 2023 Apr 14

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 循環器病領域における疾患iPS細胞の臨床応用のこれまでとこれから2022

    • 著者名/発表者名
      伊藤正道
    • 雑誌名

      医学のあゆみ

      巻: 283-14 ページ: 1432 - 1437

  • [備考] 東大病院プレスリリース 重症拡張型心筋症の病態を解明し新たな治療標的を同定

    • URL

      https://www.h.u-tokyo.ac.jp/press/__icsFiles/afieldfile/2023/04/17/release_20230417.pdf

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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