研究課題
申請書にも記載の通り、HFrEFの主要な基礎疾患である拡張型心筋症を患者を対象とした予備検討にて、血中HE4濃度が将来の左室病的リモデリングの程度と相関することを明らかにしていた。その後、このデータベースを背景に統計学的な解析を進め、血中HE4濃度は連続変数としての左室病的リモデリングの程度とも独立して相関しており、また左室リバースリモデリングの達成を目的変数とした回帰分析でも有意かつ独立して負の予測因子となることが明らかになった。さらに、このような左室病的リモデリング抑制の結果得られる生命予後改善についても、カプランマイヤー曲線の作成、Cox比例ハザード解析などにて評価を行ったところ、HE4血中濃度の高い患者群では有意に心血管イベント発生が多いことも確認された。多変量Cox比例ハザード解析にてHE4は有意かつ独立した予後予測因子であることも明らかとなり、サロゲートマーカーとしての“左室リモデリングの程度”のみならず、続発する“心血管イベント”とも関連する有用なバイオマーカーとなる可能性が示唆された。これらの臨床データは、本研究で明らかにする“HFrEF患者の左室リバースリモデリングの予測因子となり得るか”という主題につながる研究成果と考えている。なお、拡張型心筋症以外のHFrEF患者については当科で血清サンプリングを既に行っている患者群のデータベース作成を進めているところである。
3: やや遅れている
予備検討にあたる拡張型心筋症患者を対象とした臨床研究、基礎研究の論文発表に想定より過度なエフォートを割くこととなってしまったこと。コロナ禍でサンプリングやデータベース作成が想定より進まなかったこと。
まずはサンプリング済みのHFrEF患者のピックアップに漏れがないか、再度当科のデータベースのみならず、当院医療情報経営企画部とも連携して患者抽出の再検を行う。併行して、既にデータベースに挙がっている患者についてはHE4血中濃度測定を先行させて行い、イベント発生の有無や心エコーデータの推移についての情報を得ていく。
臨床データベースの作成に想定より時間を要しており、本年度多く予算を計上していた検査費用の支出が定額となったため。次年度はデータベース作成と併行して外部委託による検査費用が多く計上される予定である。
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Journal of the American Heart Association
巻: 10 ページ: e021069
10.1161/JAHA.120.021069