研究課題/領域番号 |
21K16094
|
研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
桂田 健一 自治医科大学, 医学部, 講師 (70598630)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 交感神経 / SGLT2 / 心不全 / 腎除神経 |
研究実績の概要 |
ラットに対して冠動脈結紮(心不全誘導)手術、コントロールとして偽(シャム)手術、また外科的腎神経切断による腎除神経を施行し、以下の4群を研究に用いた。シャム群、シャム+腎除神経群、心不全群、心不全+腎除神経群。心不全群ではシャム群に比較して、安静時の全腎交感神経活動および求心性腎神経活動が亢進していた。また、心不全群ではシャム群に比較して、腎皮質のSGLT2蛋白発現レベルが亢進しており、SGLT2阻害薬ダパグリフロジン静脈内投与に対する反応(尿量、ナトリウム排泄量、グルコース排泄量)も亢進していた。腎除神経により心不全群のSGLT2発現レベルおよびダパグリフロジンに対する反応は正常化した。これらの結果から、心不全ではSGLT2発現が亢進しており、これを反映してSGLT2阻害薬に対する利尿反応およびナトリウム排泄、グルコース排泄反応が増強していると考えられた。さらに腎除神経によりこれらが正常化したことから、心不全では過剰な腎交感神経活性化がSGLT2発現亢進をもたらし、体液貯留を助長している可能性が示された。これらの交感神経活動とSGLT2発現および機能連関の所見は、臨床試験で示されたSGLT2阻害薬による心不全改善作用機序の解明につながる点で非常に重要性が高いと思われる。さらに、本研究成果は、交感神経活性化を背景にもつ病態に対する、SGLT2阻害薬や腎デナベーションなどの自律神経修飾治療による介入への発展・応用基盤となる点において意義があると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和3年度は主として心不全ラットに対するSGLT2阻害薬の急性反応、および腎除神経後の変化をみる研究を予定していた。おおむね当初の研究計画を遂行できているが、心不全における腎炎症と腎除神経後の変化についての評価が行えていないため、「やや遅れている」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
令和4年度は主としてSGLT2阻害薬の交感神経活動および腎炎症に対する慢性効果(8週間のSGLT2阻害薬の経口投与の効果)を検証する予定である。当該領域の研究では、病態モデルとして心不全に対するSGLT2阻害薬の報告が近年急速に増加しており、新規性の点で課題がある。そのため、病態モデルとして肥満糖尿病モデルによる検証を検討する。肥満糖尿病では腎炎症を起点として求心性腎神経活性化に起因する脳を介した交感神経出力の増大が予想される。SGLT2阻害薬と他薬剤との併用効果や、腎除神経の治療効果検証の点で新規性が高く、肥満糖尿病における交感神経-SGLT2連関の解明およびSGLT2阻害薬の慢性効果の検証、腎除神経の効果検証は、心不全を含めた交感神経活性化病態への治療応用に貢献できる。 以降、令和5年度までに糖尿病合併および非合併心不全患者を対象とした、SGLT2阻害薬と炎症・交感神経バイオマーカーとの関連を検証する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度の研究計画のうち、心不全における腎炎症と腎除神経による変化の評価が未施行であり、余剰金が発生した。この余剰金は次年度に遅延した分の実験を行うため試薬・抗体などに使用する予定である。
|