まず、カテーテル治療後の最も頻度の高い合併症である造影剤腎症に関する研究を行った。治療前に造影剤腎症の発症リスクを推測し、そのリスクに応じて造影剤量を調整することが推奨されているが、リスクに応じた造影剤調整は必ずしもなされておらず、医療現場では術前のリスク評価が過小評価されていることを明らかにした [Shoji et al. JAHA 2021]。また、J-PCIレジストリが策定したQI指標4項目(術前の抗血小板薬使用、D2B<90分以内(ST上昇型心筋梗塞)、橈骨動脈穿刺、術前虚血評価)の達成率に関して、地域間格差が大きく、改善の余地があることを明らかにした [Shoji et al. Lancet regional health 2022]。さらに、J-PCIとレセプトデータ(DPC)を突合し、汎用性の高いリスクモデルの開発に成功した [Shoji et al. IJC 2023]。最後に、同データベースを用いて、標準的アプローチである橈骨動脈穿刺が、コストの面からも大腿動脈穿刺よりもコスト削減に繋がることを明らかにした [Shoji et al. Lancet regional health 2022]。こういった大規模データベースの活用は、参加している現場医師の数も多く、より自分事として捉えやすく、ひいては、現場医師の行動変容につながり、標準診療のさらなる遵守率向上につながるものである。これを踏まえ、虚血性心疾患における患者アウトカム(electric patient-reported outcome [ePRO])の有用性の研究を行っている。狭心症患者に対して、ePROを実施(患者側の症状の可視化やそれを活用した外来を実施)することで、患者満足度が改善するかを検証する試験を実施している。患者の登録・フォローアップは終了し現在論文作成中である。
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