研究課題/領域番号 |
21K16104
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐野 寛仁 東北大学, 大学病院, 医員 (20895916)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 慢性閉塞性肺疾患 / 活性イオウ分子種 / CARS2 / 酸化ストレス / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
COPDの病因では肺のレドックスバランス不均衡が重要である。COPDでは、禁煙後もなお持続する過剰な酸化ストレスが慢性炎症、タンパク分解酵素の活性化、細胞死・細胞老化に加えて組織修復機転の破綻の基盤となっており、持続する炎症や気腫化の進行を抑制する薬剤の開発が急務である。これらの酸化ストレスに対する生体の防御機構として、肺においてはグルタチオン(glutathione:GSH)が中心的な役割を果たしていると考えられきた。しかしながら、GSHの前駆体を用いた臨床試験では肺機能の低下抑制効果が得られず、肺の抗酸化システムについての不明な部分が残されていた。申請者らは、内因性還元分子である活性イオウ分子種(reactive sulfur species:RSS)がヒト肺に存在し、COPD肺では健常者に比して有意に低下していることを報告した。さらに、その後ミトコンドリア型システイニル-tRNA合成酵素(CARS2) が、生体内のRSSの主たる産生酵素であることが明らかになった。一方、COPD患者肺におけるCARS2の発現や機能および個体レベルでのRSS低下が肺の気腫形成や慢性炎症、アポトーシスや細胞老化などCOPD病態などに及ぼす影響については不明であり、本研究では動物モデルマウス、ヒト手術肺検体を用いて同事象について検討を行う予定である。さらには、低下しているRSSを外因性に投与することで、COPDの病態形成が改善または進行抑制が得られるかについても検討を加える。全身性の薬剤投与だけではなく、副作用を最小限に抑えつつ治療効果を得るためにも経気管的な投与での検討も進めていく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COPD患者と健常者から採取した肺構築細胞を用いて、ミトコンドリア型システイニル-tRNA合成酵素(CARS2) のタンパク発現を解析し、同一患者における呼吸機能などの臨床パラメータと相関関係を検討を行うことができた。また、Cars2ヘテロノックアウトを用いて活性イオウ分子種(reactive sulfur species:RSS)の低下がCOPD病態形成に及ぼす影響を、モデルマウスを用いて解析することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
活性イオウ分子種(reactive sulfur species:RSS)の産生低下が及ぼす機序の解明を進める予定である。 また低下したRSSを外因性に投与することで、COPDの病態が改善または予防することができるか検討を追加する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度はおおむね予定通りに試薬や物品の購入を行った。 残額については次年度の必要物品購入に充てる予定である。
|