• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

ホモシステイン代謝異常がCOPD発症に関わる機序の検討

研究課題

研究課題/領域番号 21K16107
研究機関山形大学

研究代表者

中野 寛之  山形大学, 医学部, 病院助教 (80637629)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード慢性閉塞性肺疾患 / 呼吸機能 / ホモシステイン / メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素 / 一塩基多形
研究実績の概要

我々はこれまでの疫学研究で、血中ホモシステインが呼吸機能低下と関連していることを示した。また基礎研究で高ホモシステイン血症の状態では小胞体ストレスの増強により、喫煙曝露による肺気腫が増悪することが示され、ホモシステイン代謝が慢性閉塞性肺疾患の病態形成に重要であることが示された。
これらの結果を踏まえ、一般住民を対象とした健康診断で呼吸機能検査と採血による遺伝子検査を行い解析を行った。約2700人の対象者から遺伝子のサンプルを収集することができた。メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)に関わる一塩基多形(SNPs)は7種類検出ができた。それらのアレル頻度はNational library of medicineで公開されている東アジア人のアレル頻度とほぼ同じ傾向を示していた。したがって本研究の母集団については東アジア人の集団として妥当な集団であることが示された。
これらのSNPsと呼吸機能検査データとの相関性を検討した。呼吸機能は初回測定後の3-5年後に再検査が行われており、呼吸機能の経年的な変化が追えた対象者は約120人であった。その結果初回の肺活量、一秒量、一秒率といった呼吸機能検査値についてはいずれのSNPsとの関連性を見出すことはできなかった。呼吸機能の変化量の相関について検討を行ったところ、男性の現喫煙者においてrs1476413(Intron Variant)がC/CタイプであるとC/TタイプやT/Tタイプと比べて呼吸機能が有意に低下していた。
また基礎研究において、MTHFR遺伝子をノックアウトしたマウスを作成する計画としていたが、C57BL/6系統のマウスにCRISPR-Cas9を用いてMTHFR遺伝子変異を導入した。ジェノタイピングの結果、exon 2に目的の遺伝子が挿入できていることが確認でき、ノックアウトマウスの確立に成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

疫学研究では呼吸機能検査データと遺伝子のデータを解析し、ホモシステイン代謝酵素であるMTHFRのSNPsと呼吸機能の相関を検討した。結果MTHFRの7種類のSNPsを解析し、rs1476413のC/Cアレルが男性の現喫煙者の経年的な呼吸機能低下と関連することが示された。
基礎研究ではMTHFRの遺伝子発現をノックアウトした遺伝子改変マウスの確立に成功した。
現在疫学研究では、rs1476413以外のMTHFRのSNPsと呼吸機能低下との相関や、複数のSNPsの組み合わせと呼吸機能低下との関連を検討している。また基礎研究ではMTHFR遺伝子改変マウスの作成に時間を要したが、ヘテロノックアウトマウスの繁殖が可能な状況となった。現在、MTHFR遺伝子ヘテロノックアウトマウスの血漿ホモシステイン値や肺組織などの喫煙曝露前のベースラインデータについての測定を行っている。

今後の研究の推進方策

疫学研究では、rs1476413以外のMTHFRのSNPsと呼吸機能低下との相関や、複数のSNPsの組み合わせと呼吸機能低下との関連について検討を行い、共変量を調整した多変量解析などの統計解析を行う計画である。また初回健診時に採取された採血のデータとこれらのSNPsとの関連性も併せて検討していく。特にMTHFRのどのSNPsがホモシステインの血中濃度と相関するのかを解析していく計画である。
基礎研究ではMTHFR遺伝子ヘテロノックアウトマウスのベースラインデータを確認した後に喫煙曝露を行い、小胞体ストレスに関連する蛋白質の発現の程度について測定していく。最終的には長期間の喫煙曝露を行い、慢性閉塞性肺疾患の主要な病理学的所見である肺気腫の形成や呼吸機能を評価していく。
過去の報告ではMTHFRの複数のアレルと疾患における関係性が報告されているが、疾患に対する効果が同一のアレルでも報告によって異なっており、一定の見解が得られていない。我々の大規模な疫学データと、遺伝子改変マウスを用いた基礎的データの融合により、MTHFRの遺伝子多型による疾患への効果が明らかになることが期待できる。

次年度使用額が生じた理由

研究にて消耗品を購入し残金が生じたが、少額であり、次年度に繰り越し使用いたします。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Effect of hyperhomocysteinemia on a murine model of smoke-induced pulmonary emphysema.2022

    • 著者名/発表者名
      Nakano H, Inoue S, Minegishi Y, Igarashi A, Tokairin Y, Yamauchi K, Kimura T, Nishiwaki M, Nemoto T, Otaki Y, Sato M, Sato K, Machida H, Yang S, Murano H, Watanabe M, and Shibata Y.
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 12 ページ: 12968

    • DOI

      10.1038/s41598-022-16767-2.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Role of CC Chemokine Ligand 17 in Mouse Models of Chronic Obstructive Pulmonary Disease.2022

    • 著者名/発表者名
      Machida H, Inoue S, Igarashi A, Saitoh S, Yamauchi K, Nishiwaki M, Nemoto T, Otaki Y, Sato M, Sato K, Nakano H, Yang S, Furuyama K, Murano H, Ishibashi Y, Ota T, Nakayama T, Shibata Y, Watanabe M.
    • 雑誌名

      Am J Respir Cell Mol Biol.

      巻: 66 ページ: 428-438

    • DOI

      10.1165/rcmb.2021-0069OC.

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi