研究実績の概要 |
疫学研究では、一般住民を対象とした健康診断において血液検査による遺伝子検査や呼吸能検査等を行った高畠研究のデータを使用して、メチレンテトラヒドロ葉酸還元酵素(MTHFR)に関わる一塩基多形(SNPs)と呼吸機能検査所見の経年変化の関連について喫煙状況を考慮して解析した。データを有していたのは872人であった。rs4846049, rs1476413, rs1994798, rs4846052 では現喫煙者でメジャーホモ接合体を有する研究参加者ではマイナーホモ接合体やヘテロ接合体を有する研究参加者と比べて1秒量の経年低下率が有意に高かった。基礎研究ではA549細胞のMTHFR遺伝子をsiRNAでノックダウンできることをウエスタンブロッティングで確認した。今後はA549細胞をタバコ抽出液で刺激し、アポトーシスがMTHFR遺伝子をsiRNAでノックダウンしたA549細胞で増加するかをウエスタンブロッティングやフローサイトメトリーを用いて検証している。動物実験ではC57BL/6系統のマウスにCRISPR-Cas9を用いてMTHFR遺伝子変異を導入して作成したノックアウトマウスの繁殖に成功した。ノックアウトマウスの外観や体重に明らかな差異はないことを確認し、喫煙曝露を開始した。今後はノックアウトマウスと野生型の呼吸機能や肺気腫、小胞体ストレスのマーカーの発現、肺胞細胞のアポトーシスについての差異について評価を行う予定としている。
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