研究課題
人口の高齢化に伴い、呼吸器疾患の罹患者数や死亡者数は世界的に増加している。慢性呼吸器疾患に共通するのは肺修復機転の破綻であり、新規治療標的を同定するには、肺修復の細胞・分子学的機序の解明が必要である。マクロファージは、肺の生体防御や恒常性維持に関わる主要な免疫担当細胞であり、肺の修復や再生を促進する働きを有するが、そのメカニズムは不明な点が多い。本研究の目的は、マクロファージによる肺修復・再生メカニズムを明らかにすることである。肺切除後代償性肺再生モデルでは、肺胞マクロファージおよび間質マクロファージの増加が認められた。Lineage-tracing法による細胞追跡実験により、肺胞マクロファージは自己複製により増加し、間質マクロファージは単球の遊走により増加することが示された。増加した間質マクロファージは、主に血管周囲と胸膜周囲に分布していた。間質マクロファージを枯渇させると代償性肺再生は抑制されたが、肺胞マクロファージを枯渇させても代償性肺再生に影響しなかった。間質マクロファージを枯渇させることによる各種細胞への影響を調べたところ、肺胞上皮細胞の増殖や分化ではなく血管内皮細胞の増殖が抑制されることが分かった。シングルセルRNAシークエンス解析から、間質マクロファージの一部が血管新生に関与することが示唆された。以上のことから、間質マクロファージが血管新生に働くことで、肺の再生を促進することが示唆された。本研究では、肺再生における間質マクロファージの新たな役割が見出された。
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