研究課題
慢性閉塞性肺疾患(COPD)において動脈硬化性疾患は重要な併存症であり、動脈硬化の存在がCOPDの病態形成に及ぼす詳細なメカニズムの解明及び治療戦略の確立は急務を要するものである。動脈硬化がCOPDの病態形成に及ぼす影響、およびそのメカニズムの解明のために、これまでに確立してきたタバコ煙抽出液(CSE)の腹腔内投与によるCOPDマウスモデルを用いて研究を進めてきた。CSEの腹腔内投与により、マウス肺組織では肺気腫形成が確認されたが、腹腔内投与では気道抵抗など呼吸機能への影響が小さく、CSEの投与経路について再検討した。CSE気管内投与においては、より確実な肺病理学的な変化、および気道抵抗の上昇などCOPDの病態に合致する呼吸機能の変化が確認された。また、CSEの気管内投与により、線溶系の主要な抑制因子であり、動脈硬化の初期病変である血管内皮障害に関わるplasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)の活性が血漿中で亢進していることが確認された。実験の次なるステップとして、CRISPR-Cas9によるゲノム編集技術にてヒトの脂質異常症の特徴を再現した動脈硬化モデルマウス (LDLr-/-/Apobec1-/-マウス) を用いて、CSE投与によるCOPDモデルの実験を行っている。予備実験においては、同動脈硬化マウスにCSE腹腔内投与を行いCOPDモデルを作成した際に、野生型マウスと比較し、肺組織において肺気腫形成が促進することが確認された。現在、動脈硬化モデルマウスに対してCSEを気管内投与した際の、肺の病理学的変化、呼吸機能検査、および血漿中のPAI-1活性に関する検討を進めている。
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呼吸器内科
巻: 44 ページ: 534-540
Therapeutic Advances in Respiratory Disease
巻: 17 ページ: 175346662311729
10.1177/17534666231172924