• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2021 年度 実施状況報告書

肺線維症の新たな病態理解に基づく治療法の探索

研究課題

研究課題/領域番号 21K16118
研究機関大阪大学

研究代表者

福島 清春  大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任助教(常勤) (00752156)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2024-03-31
キーワード線維症
研究実績の概要

RBM7は線維化とともに著しく増加するが、その発現を制御するメカニズムは不明であった。RBM7の発現上昇はRNAレベルよりもタンパクレベルで顕著であること、プロテアソーム阻害薬であるMG132投与によりRBM7の発現が上昇することにより、タンパク分解のレベルでの制御が重要であると考えた。共免疫沈降-質量分析により、RBM7がE3ユビキチンリガーゼであるHUWE1, LTN1, SHPRH, RNF140と相互作用することを見出した。現在、これらのE3ユビキチンリガーゼに関してsiRNAを用いて発現を抑制しRBM7発現との関連性を検討しており、今後ノックアウトマウスを作成することで治療標的としての妥当性の検討をおこなう予定としている。
複雑で多様な肺線維症の病態の理解のために、バルク解析による平均値を捉えるこれまでの手法では見逃されてきた特定の細胞集団の同定をシングルセル解析により解決することをめざした。申請者らはすでに線維症特異的血球サブセットを見出しているとともに、線維化肺において非免疫細胞との相互作用による細胞内代謝変化により, 特定の単球由来マクロファージ細胞群に線維化促進性の形質が誘導されることを見出している。間質性肺疾患患者さんの気管支肺胞洗浄液のシングルセル解析により、複数の異なった免疫細胞サブセットが線維化の進行と関連していることを見出した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

RBM7の上流・下流に存在する分子も含めたRBM7標的療法の妥当性の検証を目指すため、RBM7の発現制御メカニズムを検討し、RBM7の発現を制御する因子としてE3ユビキチンリガーゼを同定することが出来た。阪大病院および大阪刀根山医療センターから回収された肺線維症患者 (IPFおよび他の線維化性間質性肺炎を想定)の気管支鏡検査検体 (組織、気管支肺胞洗浄液(BALF))、手術検体について、当初想定していた以上に良質で多量の検体を用いてシングルセル解析を施行することが出来、空間的遺伝子発現解析を可能にしたVisium 10xを併用することで多様な細胞群の組織空間内の動的なダイナミズムを検証し、線維化肺で特異的に増加するサブセットと線維化病変との時間空間的な位置関係を検討することが出来た。

今後の研究の推進方策

RBM7の発現制御メカニズムの検討を継続する。共免疫沈降-質量分析により、RBM7と相互作用するユビキチンリガーゼの検討をおこなう。さらには、相互作用分子のin vitroでのノックダウン実験によりRBM7の発現変動の有無を検討したうえで、ノックアウトマウスを作成し肺線維症治療への応用を目指す。E3ユビキチンリガーゼは600種類以上存在し、高い基質特異性により酵素阻害薬は肺線維症の新たな治療標的となりえると考える。ユビキチンリガーゼがRBM7を介して線維化を制御するメカニズムを明らかにすることで新たな治療標的を見出すことを目指す。ヒト肺組織における線維症発症過程における多彩な免疫細胞・非免疫細胞の相互連関の解析を通した新たな病態理解・治療標的の同定に関しては、シングルセルRNA-seq, whole transcriptome RNA-seqを施行し、シングルセルRNA-seq解析により線維化に影響する特異的な単球/マクロファージサブセットの同定をおこない、線維化を制御する細胞やその細胞を特徴付ける分子について、マウスモデルで検証すると同時に、位置情報や動態を検討する。マウスモデルにおいては、ヒトでできない経時的なサンプル収集と解析が強みである。線維化の過程において、どのような細胞(線維芽細胞、上皮細胞、内皮細胞、免疫担当細胞)が、どのようなタイミングで、互いの細胞がどのように連携しながら線維化に至るのか?シングルセルRNA-seqで捉える。ヒト検体により得られた知見を複数のマウスモデルを用いた経時的なデータで検証することで、線維化という複雑な病態の本質をとらえる。。臨床検体の解析に際しては間質性肺炎症例を臨床的重症度、線維化病変の画像的評価を考慮して分類し、健常肺や他疾患コントロールとも比較する。

次年度使用額が生じた理由

コロナの影響にて年度末に納期遅延の可能性ある一般分子生物学消耗品の購入を避けたため。令和4年度に発注をおこなう。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] Specific targeting of lung ILC2s via NRP1 in pulmonary fibrosis2022

    • 著者名/発表者名
      Nii Takuro、Fukushima Kiyoharu、Kida Hiroshi
    • 雑誌名

      Cellular & Molecular Immunology

      巻: 19 ページ: 869~871

    • DOI

      10.1038/s41423-022-00867-0

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The Diagnosis of Nontuberculous Mycobacterial Pulmonary Disease by Single Bacterial Isolation Plus Anti-GPL-Core IgA Antibody2022

    • 著者名/発表者名
      Kawasaki Takahiro、Kitada Seigo、Fukushima Kiyoharu、Akiba Eri、Haduki Kako、Saito Haruko、Nitta Tadayoshi、Kawano Akira、Miyazaki Akito、Nii Takuro、Kuge Tomoki、Koba Taro、Matsuki Takanori、Tsujino Kazuyuki、Miki Keisuke、Maekura Ryoji、Kida Hiroshi
    • 雑誌名

      Microbiology Spectrum

      巻: 10 ページ: -

    • DOI

      10.1128/spectrum.01406-21

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Fatal cytomegalovirus pneumonia in a critically ill patient with <scp>COVID</scp> ‐192021

    • 著者名/発表者名
      Amiya Saori、Hirata Haruhiko、Shiroyama Takayuki、Adachi Yuichi、Niitsu Takayuki、Noda Yoshimi、Enomoto Takatoshi、Hara Reina、Fukushima Kiyoharu、Suga Yasuhiko、Miyake Kotaro、Koide Moe、Uchiyama Akinori、Takeda Yoshito、Kumanogoh Atsushi
    • 雑誌名

      Respirology Case Reports

      巻: 9 ページ: -

    • DOI

      10.1002/rcr2.801

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Pleural Effusion Caused by Mycolicibacterium mageritense in an Immunocompetent Host: A Case Report2021

    • 著者名/発表者名
      Niitsu Takayuki、Kuge Tomoki、Fukushima Kiyoharu、Matsumoto Yuki、Abe Yuko、Okamoto Masashi、Haduki Kako、Saito Haruko、Nitta Tadayoshi、Kawano Akira、Matsuki Takanori、Motooka Daisuke、Tsujino Kazuyuki、Miki Keisuke、Nakamura Shota、Kida Hiroshi、Kumanogoh Atsushi
    • 雑誌名

      Frontiers in Medicine

      巻: 8 ページ: -

    • DOI

      10.3389/fmed.2021.797171

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Loss of FCHSD1 leads to amelioration of chronic obstructive pulmonary disease2021

    • 著者名/発表者名
      Kawasaki Takahiro、Sugihara Fuminori、Fukushima Kiyoharu、Matsuki Takanori、Nabeshima Hiroshi、Machida Tomohisa、Mitsui Yuichi、Fujimura Saki、Sagawa Rio、Gaheun Lee、Kuniyoshi Kanako、Tanaka Hiroki、Narazaki Masashi、Kumanogoh Atsushi、Akira Shizuo、Satoh Takashi
    • 雑誌名

      Proceedings of the National Academy of Sciences

      巻: 118 ページ: -

    • DOI

      10.1073/pnas.2019167118

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Serum GPL core antibody levels are associated with disease activity and treatment outcomes in Mycobacterium avium complex lung disease following first line antibiotic treatment2021

    • 著者名/発表者名
      Fukushima Kiyoharu、Kitada Seigo、Matsumoto Yuki、Komukai Sho、Kuge Tomoki、Kawasaki Takahiro、Matsuki Takanori、Motooka Daisuke、Tsujino Kazuyuki、Miki Mari、Miki Keisuke、Nakamura Shota、Kida Hiroshi
    • 雑誌名

      Respiratory Medicine

      巻: 187 ページ: 106585~106585

    • DOI

      10.1016/j.rmed.2021.106585

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Advances and Challenges of Antibody Therapeutics for Severe Bronchial Asthma2021

    • 著者名/発表者名
      Abe Yuko、Suga Yasuhiko、Fukushima Kiyoharu、Ohata Hayase、Niitsu Takayuki、Nabeshima Hiroshi、Nagahama Yasuharu、Kida Hiroshi、Kumanogoh Atsushi
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 23 ページ: 83~83

    • DOI

      10.3390/ijms23010083

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Novel insights into the pathogenesis of lung fibrosis: the RBM7?NEAT1?CXCL12?SatM axis at fibrosis onset2021

    • 著者名/発表者名
      Fukushima Kiyoharu、Akira Shizuo
    • 雑誌名

      International Immunology

      巻: 33 ページ: 659~663

    • DOI

      10.1093/intimm/dxab034

    • 査読あり
  • [学会発表] 新規線維症関連遺伝子RBM7によるnon-coding RNA分解を介する線維化制御2021

    • 著者名/発表者名
      福島清春、佐藤荘、熊ノ郷淳、審良静男
    • 学会等名
      第61回呼吸器学会学術講演会

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi