研究課題
本研究では、線維化の病態を強力に促進させることが知られているTGFβが誘導する(1)遊走能(2)肺線維芽細胞含有コラーゲンゲル収縮能(3)収縮性ストレスファイバーであるα平滑筋アクチン(αSMA)産生能(4)細胞外基質(ECM)産生能を、Ex-vivoにおける代表的線維化モデルの解析方法として導入した。上記の実験には、ATCCより購入したヒト胎児肺由来線維芽細胞株HFL-1、当院呼吸器外科手術症例において肺癌患者の摘出肺の非癌部肺組織から分離培養した正常肺線維芽細胞、研究協力施設の神奈川循環器呼吸器病院より提供いただいた肺線維症肺線維芽細胞を用いた。間葉系幹細胞(MSC)由来Extracellular Vesicle (EV)製剤をTGFβ刺激下で線維芽細胞に作用させたところ、ファイブロネクチン濃度勾配に対する遊走能の抑制、肺線維芽細胞含有コラーゲンゲル収縮能の抑制がみられた。また、ウエスタンブロットによりαSMAやⅠ型コラーゲンの産生能の抑制がみられた。次に、MSC由来EV製剤のmiRNA網羅的解析結果をもとに、抗線維化作用が期待される複数のmiRNAに着目し、miRNA mimicやmiRNA inhibitorを用いて上記のEx-vivo実験を行った。その結果、ある特定のmiRNAが抗線維化作用を有することが示された。さらに作用機序解明のために細胞内シグナル経路に着目して検証を進め、EV製剤を投与された肺線維芽細胞では繊維化に関連するリン酸化シグナルが抑制されていた。また、それに関連して、上記のmiRNAが特定の蛋白発現を抑制することも示した。
2: おおむね順調に進展している
2021年度は、MSC-EV製剤の抗線維化作用についてのEx-vivo検証を行った。2022年度は、miRNA網羅的解析結果をもとに特定のmiRNA及びそのターゲット蛋白に着目し、特定の細胞内シグナル経路を介した抗繊維化作用機序の解明を行なった。
正常肺線維芽細胞と肺線維症肺線維芽細胞に対するMSC-EV製剤の作用の違いについて、上記のリン酸化シグナル経路に着目して検証を行う。また、In-vivo検証としてブレオマイシンモデルマウスにMSC-EV製剤を経静脈的に投与し、肺組織の免疫組織化学染色やIVUSなどにより抗線維化作用機序の検証を行う。今後は直接的に抗線維化の機能制御に関連するmiRNAの機序を証明したことから特許の申請を行い、学会論文発表を次年度に行う。
COVID-19流行や新規Target分子を同定したことに伴い実験計画の一部変更があった。次年度使用額は、実験計画を完了するための物品費や、国際学会発表や原著論文投稿に伴う費用などに使用する予定である。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Respiratory Medicine Case Reports
巻: 37 ページ: 101665~101665
10.1016/j.rmcr.2022.101665