研究課題/領域番号 |
21K16125
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
川口 高徳 立命館大学, 薬学部, 助教 (70844281)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 線毛 / アドレナリン受容体 / 足場タンパク質 / ERMタンパク質 |
研究実績の概要 |
本研究では、肺防御の第一線を担う気道線毛のActin細胞骨格に関わるタンパク質の、線毛形成および運動制御におけるメカニズム解明を目指した研究を行なっている。本年度では、Ezrinの発現を5%以下まで抑制したノックダウンマウスの気道に対し、超解像顕微鏡観察および電子顕微鏡解析を用いて、線毛の構造や配向性の解析を行なった。また、アドレナリン受容体B2ARの刺激薬であるプロカテロール処理時の線毛運動の活性化応答の比較、および免疫蛍光染色によるB2ARの局在の解析を行なった。細胞膜上でのB2ARの発現量の比較、プロカテロール刺激時の細胞内cAMP濃度の比較についても行なった。その結果、Ezrinノックダウンマウスでは、超解像顕微鏡観察および電子顕微鏡解析の結果からは、線毛の構造および配向性には異常は認められなかった。しかし、プロカテロール処理時の線毛運動の活性化については、Ezrinノックダウンマウスでは、その活性化応答が有意に抑制されていることが明らかとなった。また、免疫蛍光染色を用いたタンパク質の局在解析では、野生型マウスではアピカル領域にB2ARと、その足場タンパク質であるNHERF1が局在していたが、Ezrinノックダウンマウスではこの局在が破壊され、B2AR、NHERF1ともに細胞質領域にも分布が見られた。Ezrinノックダウンマウスでは、野生型マウスと比較して、細胞膜上でのB2ARの発現量も低く、プロカテロール刺激時の細胞内cAMP濃度の上昇レベルも、これらのプロカテロール応答性の線毛運動活性化や細胞内局在の結果に対応する形で、有意に低いことが明らかとなった。これらの結果について取りまとめ、国際学術雑誌(Journal of Cell Science)に投稿し、掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では、初年では、Ezrinノックダウンマウスを用いた超解像観察より、期間および肺での線毛の配向性を評価すること、また、免疫蛍光染色によってB2ARやNHERF1の局在を明らかにすることを計画していた。しかし、本年度は、それに留まらず、その他にもEzrinノックダウンマウスにおいて電子顕微鏡解析による線毛の形態形成および気管での微粒子の排出速度の変化の定量的な解析を行うことができた。また、B2ARの刺激剤であるプロカテロール処理時の線毛運動の変化を観察することから、Ezrinノックダウンマウスではプロカテロールによる線毛運動の活性化が抑制されていることが明らかとなった。EzrinノックダウンマウスにおけるB2ARおよびNHERF1の局在の変化と、それによる線毛運動の低下を裏付ける実験として、ビオチン化を用いて細胞膜上のB2ARの発現量の定量的解析を行なった結果、野生型マウスほ比較してEzrinノックダウンマウスでは細胞膜上のB2ARの発現量が有意に低いということも明らかとなった。さらに、線毛運動の活性化を引き起こす要因として、細胞内のcAMPレベルの上昇が考えられたため、プロカテロール刺激前後におけるcAMPレベルを測定したところ、プロカテロールによる細胞内cAMPレベルの上昇が、野生型マウスと比較してEzrinノックダウンマウスでは抑制されていることが明らかとなった。これらの実験を行えたことから、初年度より、本研究課題における結果を国際学術雑誌(Journal of Cell Science)に掲載していただくことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Ezrinノックダウンマウスにおいて、Ezrinがその膜発現に関与することが示唆されている線毛運動の活性化に関わる塩化物イオンの輸送に関わるCFTRについての解析を行うことと、細胞骨格の構築を制御するRho GTPaseであるRac1、RhoAおよびCdc42の活性変化の解析を行う。またEzrinの阻害剤として知られる、NSC305787による線毛運動への影響についても解析を行なっていく。Moesinノックアウトマウスについても、同様の解析を行い、細胞骨格関連タンパク質ファミリーであるEzrinおよびMoesinの線毛の形成および運動における役割の解明を目指した研究を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度、計画よりも少ない実験数で結果が得られたため費用に余裕ができたが、来年度は刺激剤・阻害剤実験を追加する予定であり、その試薬購入費に充当する計画である。
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