研究課題/領域番号 |
21K16125
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
川口 高徳 立命館大学, 薬学部, 助教 (70844281)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 線毛 / アドレナリン受容体 / 足場タンパク質 / ERMタンパク質 / 細胞骨格 / 膜タンパク質 / 感染防御 |
研究実績の概要 |
本研究では、肺防御の第一線を担う気道線毛のActin細胞骨格に関わるタンパク質の、線毛形成および運動制御におけるメカニズム解明を目指した研究を行なっている。本年度では、昨年度にJournal of Cell Scienceにおいて発表した、Ezrinの線毛運動制御に関わる役割の解明を発展させるために、Ezrin InhibitorであるNSC305787を用いた解析を行った。ヒト気管支上皮細胞 (Normal Human Bronchial Epithelial cells; NHBE) に対して、Air-Liquid Interface (ALI) 培養を行い、免疫蛍光染色により線毛の発現を確認することで線毛細胞への分化を確かめた。分化後の線毛細胞に対し、NSC305787の濃度および時間依存的なEzrinのリン酸化レベルの変化を解析した。それに伴う、線毛運動の変化についても解析を行った。また、Ezrinのリン酸化レベルの変化に伴うEzrin、Ezrinおよびβ2アドレナリン受容体と架橋的に結合する足場タンパク質であるNHERF1、線毛運動制御に関わるβ2アドレナリン受容体の局在変化について着手している。それと並行し、Ezrinの線毛運動および線毛維持に関わる役割を明らかにするため、アクチン重合阻害剤を用いた解析を進めている。アクチン重合阻害剤処理による、濃度および時間依存的な線毛運動への影響の解析と、線毛の運動性に関わる微細構造への影響について解析を行っている。 本研究に関わる内容について、2022年度は、日本生理学会、日本生化学会 、日本薬学会などの国内学会や、稀少疾患シンポジウム、Cold Spring Harbor Asia Conference (CSHA) on Cilia & Centrosome 2023といった国際学会にて成果発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の予定では、2年次において、Ezrinノックダウンマウスにおける気管および肺の線毛の形態形成の変化や、線毛運動によって変化すると考えられる気管の微粒子の排出速度の変化の定量的解析、合わせてEzrinノックダウンマウスの気管・肺の線毛運動において、β2アドレンリン受容体のアゴニストであるプロカテロールを用いた解析を目標としていた。 しかし、本年度はそれに留まらず、NHBEにおけるEzrin InhibitorであるNSC305787を用いた運動解析や、アクチン重合阻害剤処理を用いた線毛運動への影響の解析や線毛の運動性に関わる微細構造への影響における解析へと発展している。結果として、NHBEのALI培養を用いた線毛細胞分化環境の構築や、得られた線毛細胞を用いて、NSC305787の濃度および時間依存的なEzrinのリン酸化レベルの変化について一定の結果を得ることができた。また、アクチン重合阻害剤処理を用いた解析にも発展し、線毛運動への影響の解析や、運動性に関わる微細構造への影響についての解析に着手することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、安定的な培養系の構築が叶ったNHBEを用いて、Ezrin InhibitorであるNSC305787による経時的なリン酸化レベルの変化に伴うEzrin-NHERF1-β2アドレナリン受容体複合体の維持に関わるプロセスや細胞内局在における解析を進めることで、線毛機能制御に重要な働きをする細胞骨格関連タンパク質であるEzrinの役割を明確にしていくことを目的に、研究を進めていく。Moesinノックアウトマウスについても、同様の解析を行い、細胞骨格関連タンパク質ファミリーであるEzrinおよびMoesinの、より高次な線毛の形成および運動における役割の解明を目指した研究を推進していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度使用予定の試薬が輸入品となり、次年度に持ち越しとなったため、次年度使用額が生じた。次年度では、Ezrin InhibitorであるNSC305787を用いたタンパク質の経時的局在変化の解析を行うため、より実験試薬の購入が必要となる。
|