研究課題/領域番号 |
21K16130
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
東出 直樹 東北大学, 大学病院, 助教 (00732223)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 肺線維化 / 鉄代謝 |
研究実績の概要 |
臓器線維化は、慢性炎症に伴って器官または組織にI型コラーゲンの沈着や線維芽細胞、筋線維芽細胞などの蓄積が生じて、正常な上皮組織がこれらの間質組織に置き換わる現象であり、臓器線維化が進行すると最終的に臓器不全に至る。各種線維化疾患の中でも、特発性肺線維症は診断されてからの生存期間中央値が2から3年、5年生存率は20から30%と非常に予後が悪いことが知られている。現在の治療では、これらの線維化疾患に対して治癒することも進行を止めることも不可能であり、臓器移植を除いて有効な治療法がない。そのため治療薬の開発に向けた線維化のメカニズム解明が急がれる。 公共の遺伝子発現情報データベースであるNCBIのGene Expression Omnibus (GEO)に登録されているデータセットを用いて、SSC関連間質性肺炎患者由来肺サンプルと健常者由来肺サンプル間、またIPF患者由来肺サンプルと健常者由来肺サンプル間の遺伝子発現パターンを比較した。その結果、両者の間質性肺炎患者群で鉄トランスポーターであるZIP8の著しい発現低下が認められた。また前者では、同じく鉄トランスポーターであるDMT1や抗酸化酵素として鉄代謝異常にも関与することが報告されているSod1/2、フェリチンのオートファジーにおける主要因子とされるNCOA4の発現低下を認めた。 現在、線維芽細胞における鉄動態の検討を行っている。ヒト肺線維芽細胞をTGFβ添加により筋繊維芽細胞へと分化させた後に、鉄キレート剤を投与して「鉄欠乏」状態とした環境下、2価鉄イオンを投与して「鉄負荷」状態とした環境下での線維芽細胞の活性化を評価するために実験条件の検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
他研究課題でのエフォートが大きくなっていたことに加え、本実験での条件検討や手技の習熟などで時間を要した。実験をくりかえし行い、その結果を慎重に解釈する必要があった。
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今後の研究の推進方策 |
線維芽細胞における鉄動態の検討を線維芽細胞株を用いて検証した後に、肺線維化マウスモデルを使用してin vivoでの解析を進める。またNCBIのGEOデータから解析を行い、強皮症関連間質性肺炎患者での鉄トランスポーターであるDMT1などの発現低下を認めた。こうした鉄代謝の異常と細胞内鉄濃度の上昇や活性酸素種による細胞障害の有無について、今後検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はNCBIなどの公共データベースにおける解析を主軸に行いつつ、各実験の手技習熟や条件設定などで進捗状況が遅れたため、予定していた実験を完了できなかった。ドライ解析で得られた結果から、鉄トランスポーターの異常と細胞内鉄濃度やROS産生との関連について、解析を行っていく予定である。
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