研究課題/領域番号 |
21K16137
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
柴田 翔 東京医科歯科大学, 東京医科歯科大学病院, 助教 (20897780)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 好塩基球 / 間質マクロファージ / 慢性閉塞性肺疾患 / COPD |
研究実績の概要 |
慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease: COPD)はタバコ煙を主とする有害物質を長期に吸入暴露することなどにより生ずる肺疾患であり、呼吸機能検査で気流閉塞を示す。気流閉塞は末梢気道病変と気腫性病変がさまざまな割合で複合的に関与し起こる。研究代表者らはエラスターゼ誘発モデルにおいて間質マクロファージの分泌するマトリックスメタロプロテアーゼ(Matrix metalloproteinase: MMP)-12が気腫形成に関与することを報告した。また、好塩基球由来インターロイキン(Interleukin: IL)-4が単球に作用しMMP-12産生間質マクロファージへの分化を誘導することも明らかにした。しかしながら、好塩基球の肺への浸潤、活性化を促す因子についてはこれまでに明らかではなかった。 令和3年度に研究代表者らはサイトカインIL-3に着目し、エラスターゼ誘発モデルを用いて解析を行った。IL-3欠損マウス、野生型マウスそれぞれに豚膵臓由来エラスターゼ0.9単位を点鼻投与し、5日後の肺の浸潤細胞をフローサイトメトリーを用いて解析した。また、21日後の肺の病理組織を評価した。 野生型マウスと比較してIL-3欠損マウスでは好塩基球の浸潤が抑制された(細胞数37599±3430 vs 8840±1457, p<0.001)。また、組織で肺気腫形成をほとんど認めず、気腔の拡大をあらわす指標である平均肺胞径は野生型マウスと比較してIL-3欠損マウスで有意に減少していた(83.3±5.9 vs 52.5±1.8, p<0.01)。 好塩基球の肺への浸潤、活性化にIL-3が関わっている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エラスターゼ誘発モデルを用いた実験系は十分に機能し、肺気腫形成の病態解析は順調に進行している。一方で、タバコ煙抽出物を用いたモデルも検証しているが、エラスターゼ誘発モデルと比較して肺気腫形成の程度が弱い。野生型マウスと各種遺伝子改変マウスを比較して解析しているが、差異が捉えるのが難しい場合がある。
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今後の研究の推進方策 |
タバコ煙抽出物は自施設で精製しているが、マウスに投与した際の反応にロット間のばらつきが生じる。市販品の調達なども検討している。In vitroでタバコ煙抽出物にて骨髄由来好塩基球(Bone marrow-derived basophils: BMBa)を刺激する系の確立を試みており、タバコ煙抽出物が好塩基球の活性化を促す因子となり得るか解析を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画的に実験に必要な動物、試薬を購入したが、403円の残額が生じた。次年度の研究に使用する。
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