研究実績の概要 |
令和4年度、5年度はIL-3、タバコ煙抽出物(Cigarette smoke extract: CSE)に着目し、エラスターゼ誘導モデル、骨髄由来好塩基球(Bone marrow-derived basophils: BMBa)を用いて解析を行った。野生型マウスと比較してIL-3欠損マウスでは、エラスターゼ点鼻投与5日後の好塩基球の肺への浸潤が抑制され、気腫形成を認めなかった。また、in vitroの解析において、エラスターゼもしくはCSEの刺激による好塩基球のIL-4分泌に、培養上清中のIL-3の存在が重要であることが分かった。 エラスターゼ誘発モデルにおいて、好塩基球の浸潤、肺気腫形成にIL-3が重要であることが分かった。In vitroの解析において、CSEは豚膵臓エラスターゼ、パパインと同様にIL-3の存在下で好塩基球を活性化させることが明らかとなった。 令和5年度はCSEを用いてin vivoの解析を行った。CSEはマウスの腹腔内にDay -1, 4, 9で投与し、1日おきに点鼻投与も行った。21日目の肺組織を確認したところ野生型マウスではCSEを投与した群で気腫病変が形成され、平均肺胞径は有意に増加していた。好塩基球を除去できるマウスを用いて同様にCSEを投与したところ、好塩基球の除去の有無で気腫病変、平均肺胞径に差は認めなかった。続いてCSEをマウスの腹腔内にDay -1, 4、点鼻でDay0, 2, 4に投与し、Day5で肺組織への浸潤細胞をFACSで解析した。好塩基球を除去したマウスでは肺組織中の好酸球数が有意に減少していた。以上より、CSEの腹腔内投与、点鼻投与の組み合わせにより肺気腫モデルを作成することはできたが、エラスターゼ誘発モデルと比較して気腫の程度が弱く、好塩基球除去の有無による差を評価することはできなかった。
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