研究課題/領域番号 |
21K16138
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
和田 洋典 信州大学, 医学部附属病院, 助教(診療) (80848739)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 肺高血圧 / 肺気腫 |
研究実績の概要 |
血管内皮成長因子受容体阻害薬(SU5416)投与と、低酸素曝露による第3群肺高血圧症モデルを用いて、肺血管拡張薬(シルデナフィル)及びホーミングペプチド(CAR)投与による肺血行動態の変化を検証した。VEGF受容体阻害薬の皮下注後、酸素濃度15%の低酸素環境下で6週間ラットを飼育し、シルデナフィル、CARを肺血行動態測定5日前より連日投与して肺血行動態を評価した。シルデナフィル単剤に比べCARと同時投与した場合に、肺血行動態が改善していた。SU5416投与低酸素曝露群(SUHx)における肺動脈病変は主として中膜平滑筋層の肥厚が観察され、ヒト第3群肺高血圧症の病理所見に類似していた。またSUHxラット肺は肺気腫の各指標(mean linear intercept (MLI)、destructive index (DI))が高値であった。アポトーシスの指標としてカスパーゼ3免疫染色を行いその陽性細胞を計測し、apoptotic index (AI)として算出した。AIはSUHx群において有意に高く、肺気腫形成にアポトーシスの関与が示唆された。肺ホモジネートを用いたウエスタンブロットを行い、アポトーシスの指標であるカスパーゼ3の亢進が、シルデナフィルとCARを同時投与した群において最も抑制された。シルデナフィルとCARを同時投与した群において、一部のMAPキナーゼ(p38MPAK)のリン酸化が最も抑制された。血管内皮細胞、肺胞中隔の細胞のそれぞれで生じるMAPキナーゼ、アポトーシスの亢進が第3群肺高血圧症の病態解明の鍵となる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低酸素曝露、VEGF受容体阻害薬皮下注を併用した第3群肺高血圧症ラットモデルを継続して飼育できる環境が整った。ラット肺ホモジネートから蛋白抽出して保存し、ウエスタンブロットを初めとした蛋白発現の検討を継続できる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き第3群肺高血圧ラットモデルを用いた低酸素誘導血管新生蛋白の定量を継続する。 ラット肺ホモジネートを用いたウエスタンブロット、ELISAを行い、Angiogeninなどの血管新生蛋白や、MAPキナーゼの発現を検証する。ラット左肺を用いて免疫染色を行い、肺胞中隔、肺動脈周囲にみられるマクロファージの免疫染色を行い、肺気腫、肺高血圧の病変形成が強い部位に集積するマクロファージの特徴を検証する。並行してラット血清、肺ホモジネートを用いた酸化ストレス測定(生物学的抗酸化能(biological antioxidant power、BAP)を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画で見込んだよりも安価に研究が進んだため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額は令和4年度請求額と合わせて消耗品費として使用する予定である。
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