転移性脳腫瘍は予後不良であり、患者の生活の質を損なうため病態解明を喫緊に要する。本研究では、転移性脳腫瘍の「成立」の過程に注目し、その背景にある免疫―癌細胞間相互作用や分子機構を明らかにすることを目的としている。 具体的には、①生体内での癌細胞の運命の多様性を明らかにし、②癌細胞に対する自然免疫細胞の関与と機能を解明し、③②の応答の場に存在する細胞群を同定したうえで可視化し。④既知の自然免疫ー癌細胞の相互作用に関わるとされる因子について、ミクログリアにおける機能解析を行うことが研究開発の概要である。 最終年度である本年は前年度までに達成した①2光子顕微鏡を用いて生体内での癌細胞の運命の多様さを可視化する系の作製完了②ミクログリアの癌細胞の反応への多様さを明らかにするための、ミクログリアの機能解析系の確立 ③ミクログリアが癌細胞の排除に関わるデータの取得 を踏まえ、この分子的基盤を探索するため、確立したモデルマウスにシングルセルRNAseqを行うことで、画像データと単細胞発現解析の統合を試みた。また、腫瘍の生着過程における分子発現の変化をRNAシークエンスによりスクリーニングし、機能解析を行った。 結果、ミクログリアの癌細胞の排除行動を高める因子を複数同定し、これらをまとめて本年度中に論文投稿まで完了した。現在は掲載に向けた原稿の改訂中である。これらの研究内容から、総じて研究計画は十分に達成したと考えられる。
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