本年度は【研究計画2】 短鎖脂肪酸受容体ノックアウトマウスを用いた授乳期プロピオン酸がアレルギー性気道炎症に寄与する制御機構の解明を行った。 プロピオン酸を含む短鎖脂肪酸は各種免疫細胞に対し、G蛋白共益型受容体の一種であるGPR41、GPR43等を介し、生理活性を来たすことが明らかになっている。そこで我々はこれまでの研究計画によって明らかとなった授乳期プロピオン酸がアレルギー性気道炎症に寄与する制御機構を解明するためにGPR41欠損マウスおよびGPR43欠損マウスを用いたアレルギー性気道炎症の解析を行った。野生型およびGPR41、GPR43欠損妊娠マウスの飲水中にプロピオン酸を投与する群および無投与群 を置き、その後、成長した仔マウスに対しHDM誘導性アレルギー性気道炎症を惹起し、各群におけるアレルギー性気道炎症の比較を行った。その結果GPR41欠損マウスは、プロピオン酸曝露にかかわらず、BALF中の好酸球とCD4+ T細胞、肺浸潤好酸球と好中球の数が同等であり、プロピオン酸による気管支周囲および血管周囲の炎症抑制を排除した。また、GPR41欠損マウスでは、プロピオン酸処理によって誘導されるHDM特異的IgG1産生の減少が消失した。さらに、縦隔リンパ節CD4陽性細胞およびBALCD4陽性細胞によるIL-5およびIL-13の産生は、プロピオン酸曝露GPR41欠損マウスとコントロールGPR41欠損マウスの間で同等であった。一方、GPR43欠損マウスでは、野生型マウスと同様に、プロピオン酸は依然としてアレルギー性気道炎症を改善し、Th2サイトカイン産生を抑制した。 我々がこれらのデータより、GPR43ではなく、GPR41がプロピオン酸受容体として働き、HDM誘発アレルギー性気道炎症を抑制していることを明らかにした。
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