研究課題/領域番号 |
21K16157
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
臼井 俊明 筑波大学, 医学医療系, 講師 (50825099)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | MAFB / 巣状糸球体硬化症 / 糸球体上皮細胞 / 転写因子 / 疾患モデルマウス |
研究実績の概要 |
MAFBは、腎臓の糸球体上皮細胞特異的転写因子である。これまでヒトのMAFB変異による疾患として、多中心性手根足根骨融解症候群(MCTO)とデュアン眼球後退症候群(Duane症候群)が知られている。MAFB変異をもつこの2疾患は腎の糸球体上皮細胞障害をきたし、慢性腎臓病の一種である巣状糸球体硬化症をきたす。腎の病型は同じだが、2疾患のMAFB変異部位は異なっており、ヒト腎生検でのMAFB染色パターンに加えて腎以外の表現型も大きく異なる。本研究では、ゲノム編集技術を用いて2疾患と同じ変異を持つ疾患モデルマウスを解析して、2疾患のMAFB変異がいかに巣状糸球体硬化症をきたすかを明らかにすることを明らかにすることを目的とした。 ゲノム編集(CRISPR-Cas9システム)を用いて、ヒトMCTO患者と同じ変異 (p.Pro59LeuMAFB変異) をもつ疾患モデルマウス(MCTOマウス)、ヒトDuane症候群患者と同じ変異(p.Leu239ProMAFB 変異)をもつマウス(Duaneマウス)を筑波大学生命科学動物資源センターで作製した。MCTOマウスは、若齢期からアルブミン尿を呈して腎に巣状糸球体硬化症を呈すること、Duaneマウスもポドサイト障害を起こすことを確認し、ヒト疾患と同様のタンパク尿や糸球体上皮細胞障害の表現型を示すことを確認した。MCTOマウスの腎臓の単離糸球体のRNA-seqを行い、PI3K-Aktシグナル亢進を確認し、この抑制薬であるメシル酸イマチニブの投与でMCTOマウスのアルブミン尿減少・糸球体上皮細胞障害の改善を確認した。 研究の途中経過報告が、高く評価され、第65回日本腎臓学会学術総会で一般優秀演題賞を受賞した。また、研究内容を含む総説が査読付き国際学術雑誌でAcceptされた。研究内容について査読付き国際学術雑誌への投稿準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲノム編集(CRISPR-Cas9システム)を用いて、ヒトMCTO患者と同じ変異 をもつ疾患モデルマウス(MCTOマウス)、ヒトDuane症候群患者と同じ変異(p.Leu239ProMAFB 変異)をもつマウス(Duaneマウス)を筑波大学生命科学動物資源センターで作製した。 MCTOマウスは、若齢期からアルブミン尿を呈して腎に巣状糸球体硬化症を呈すること、Duaneマウスもポドサイト障害を起こすことを確認し、ヒト疾患と同様のタンパク尿や糸球体上皮細胞障害の表現型を示すことを確認した。 MCTOマウスの腎臓の単離糸球体のRNA-seqを行い、現在、分子メカニズムの解析中である。 研究の途中経過報告が、高く評価され、第65回日本腎臓学会学術集会総会で2年連続での一般優秀演題賞を受賞した。国際学会である第60回欧州腎臓学会議・欧州透析移植学会議でも研究内容採択され、査読つき国際学術雑誌への投稿準備まで進められており、順調に進展しているため。
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今後の研究の推進方策 |
MCTOマウスの単離糸球体のRNA-seqの結果で、糸球体上皮細胞障害との関連が示唆されるPI3K-Aktシグナルの糸球体上皮細胞に発現のある遺伝子を同定して、転写因子であるMAFBが転写を制御している遺伝子をレポーターアッセイを用いて確認する。 またMCTOベクターを293T細胞(ヒト胎児腎細胞)にトランスフェクションを行い、タンパクレベルで、AktシグナルがMCTO変異で上昇しているか確認する解析も行う。 上記の結果がまとまったところで、査読つき国際学術雑誌への投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で、研究用の試薬・抗体などの消耗品の生産のおくれと品不足があったこと、さらにコンテナ便が混んでいるため、輸入に時間がかかり研究用年度跨ぎになった。また、予定していた疾患モデルマウスの外注での解析費用が、コロナ禍の影響で解析用試薬の輸入遅延で時間がかかり研究用年度跨ぎになったことが主な理由である。 次年度で残額分の研究費を使用して、予定の研究用試薬・抗体購入や、外注解析を含めた実験動物の解析費用に充てる計画とする。
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