研究課題/領域番号 |
21K16170
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
佐藤 浩司 順天堂大学, 大学院医学研究科, 助教 (60888650)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 慢性腎臓病 / 腎線維化 / 腎性貧血 / エリスロポエチン / 低酸素誘導因子 / TGFβ / DNAメチル化 |
研究実績の概要 |
腎エリスロポエチン産生細胞由来の細胞株であるReplic細胞は、TGFβシグナルの活性化およびEPOと低酸素誘導因子HIF2αの遺伝子領域のDNAメチル化により、筋線維芽細胞の性質を有しEPO産生能を喪失している。Replic細胞におけるEPO産生能の可塑性を評価するために、ウイルスベクターを用いたHIF2αの恒常的過剰発現を同細胞に試みたところ、様々な条件下で行っても遺伝子導入は確認されず、現時点ではHIF2αの恒常的過剰発現の実験系は確立できていない。Replic細胞のEPO産生能喪失の原因としてDNAメチル化を主に誘導するDNA methyltransferase (Dnmt)の発現亢進が考えられており、Replic細胞では、DnmtのなかでもDnmt1の発現が特に亢進しているため、これらを阻害する薬剤である5-Aza-2-deoxycytidineをReplic細胞に投与したところ、EPOとHIF2αの遺伝子領域の一部において、有意なDNAメチル化の減少が確認された。また、DNAメチル化や線維化マーカー高発現の一因として考えられるTGFβシグナルの亢進に対して、TGFβ阻害薬であるSB431542をReplic細胞に投与したところ、線維化マーカーのαSMAの発現が有意に低下した。これらの薬剤介入では部分的なReplic細胞の性質の変化が認められた一方で、HIF安定化薬の投与による低酸素刺激を加えてもEPO産生誘導は現時点では認められておらず、今後も条件の検討を継続するが、薬剤の介入によるReplic細胞の形質の可塑性は現時点では限定的である。HIF安定化薬のReplic細胞への影響に関しては、生体から単離した細胞での細胞の性質の変化について検討を行っており、形質や低酸素刺激への反応性について、Replic細胞との相違についての評価を継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Replic細胞はCKDにおける腎線維化機序を評価するうえで有用であり、同細胞株の性質を評価するための適切な薬剤の投与量と投与期間は設定することができたが、一方で同細胞株への遺伝子導入は現時点では困難あるため、やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
Replic細胞では薬剤投与による部分的な性質の可塑性が認められている。今後は、治療介入によるReplic細胞における線維化や炎症のマーカーの変化を評価することと、生体由来の種々の細胞と性質を比較検討することにより、CKD病態のさらなる解明と新規治療ターゲットの発見を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞における遺伝子導入実験が予定通り進んでいないことと、一部のRT-PCRとウエスタンブロットによる解析を来年度に一括して行う予定であるため。来年度に、遺伝子導入の条件検討の継続と、それを踏まえた細胞における線維化マーカーの最終的な解析を行う。
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