腎生検診断された糸球体疾患患者102症例の前向きコホート研究により,ポドサイトEGR-1発現率が尿蛋白量,尿nephrinおよびpodocin mRNA量と正相関,糸球体podocin発現と逆相関しており,糸球体疾患患者においてポドサイトのEGR-1発現頻度とポドサイト傷害の程度ならびに脱落ポドサイトの程度に関連があることが示唆された.同コホートにおいて,IgA腎症(IgAN)症例のみの解析でも同様の傾向が観察され,またポドサイトEGR-1発現率は管内細胞増多や細胞性/線維細胞性半月体を伴う糸球体率とも関連する傾向であった.ループス腎炎(LN)症例75例による後向きコホート研究でも,ポドサイトEGR-1陽性糸球体率がSLEDAIスコア,尿蛋白量,管内細胞増多・細胞性/線維細胞性半月体・フィブリノイド壊死を伴う糸球体率と相関,腎機能と逆相関していた.糸球体腎炎による二次性ポドサイト傷害が原疾患の腎炎の活動性に影響されることが知られており,EGR-1がヒトのポドサイト傷害の染色マーカーになり得ると考えられた. IgAN症例においてもLN症例においても1-2年間の短期間の尿蛋白減少は,ポドサイトのEGR-1発現割合に関わらず多くの症例で認められ,EGR-1発現ポドサイトが治療により回復しうる可能性があった.一方,LN症例ではEGR-1陽性ポドサイトを含む糸球体率は長期的には腎機能低下に関連していた. 後向きコホート研究で,微小変化型ネフローゼ症候群(MCD)症例36例とネフローゼ症候群発症の巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)症例9例を比較したところ,FSGS群で有意にポドサイトEGR-1発現率が上昇していた.FSGSはMCDよりポドサイトに強い傷害が加わっていることが示唆された.
|