研究代表者はBone Morphogenetic Protein(BMP)- 7のantagonistであるNeuroblastoma suppressor of tumorigenicity 1(NBL1)が将来の末期腎不全(ESRD)を強力に予測するバイオマーカーであることを明らかにした。またNBL1KOマウスが、UUOにより誘導した腎線維化に対して抵抗性があることがわかったが、腎線維化に関与する分子機序や、糖尿病性腎症でのNBL1の役割は未知であるため、これらを明らかとすることを目的とした。NBL1KOマウス(ホモタイプ、ワイルドタイプ)を麻酔下で右腎摘出を行った後に高脂肪餌を与え、ストレプトゾトシンを投与して糖尿病マウスを作成し、24週後に麻酔下で心臓より全採血を行い、臓器を採取した。飼育期間中において、糖尿病群のホモおよびワイルドタイプについて体重、血糖値の差は認められなかった。尿中のアルブミン・クレアチニン比についても差は認められなかった。しかし血清中NBL1の測定を行うと、ワイルドタイプにおいて非糖尿病群と比較して、糖尿病群でNBL1値は有意な上昇が認められた。腎臓組織での遺伝子発現を解析すると、TGFβ1mRNAの発現が糖尿病群のワイルドタイプと比較するとホモタイプで有意に低値であった。これまでに行った培養細胞実験では、高糖刺激によりHK-2細胞のNBL1は上昇し、EMTマーカーであるαSMAやfibronectin等が上昇した。また培養細胞のNBL1をノックダウンすると、EMTマーカーの発現は減少がした。これらの実験結果より、高血糖は血中のNBL1を上昇させ、NBL1が腎組織でのTGFβ1の発現を増加させ、EMTに関与していると示唆された。
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