研究課題/領域番号 |
21K16174
|
研究機関 | 金沢医科大学 |
研究代表者 |
藤本 圭司 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (30460364)
|
研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 可溶性ウロキナーゼ受容体 / SMPDL3b / 原発性ネフローゼ症候群 |
研究実績の概要 |
原発性ネフローゼ症候群(NS)において糸球体ポドサイト細胞膜に発現するSMPDL3bは、ウロキナーゼ受容体(uPAR)によるポドサイト傷害作用をブロックしポドサイト保護的に作用する可能性が報告されている。本研究では、ポドサイトSMPDL3b発現の代替指標として尿SMPDL3b、 ポドサイトuPAR発現および循環血中の可溶性uPAR(suPAR)の両者を反映した指標として尿suPARを用いて原発性NS(47症例190検体)を対象に、尿SMPDL3b(または尿suPAR)と尿蛋白量との関連を一般化線形混合モデル[目的変数:尿蛋白量、説明変数:固定効果として尿SMPDL3b(または尿suPAR)および交絡因子、変量効果として個体差]にて横断的に検討した。交絡因子の特定にはDirected acyclic graph分析を用いた。解析の結果、尿SMPDL3bと尿蛋白量減少、尿suPARと尿蛋白量増加に関連性が示唆された(いずれもP<0.001)。さらに、尿SMPDL3b/尿suPAR高値と原発性NSの病勢悪化に相関を認め(中央値:正常コントロール143.0、完全寛解85.6、不完全寛解Ⅰ型77.1、不完全寛解Ⅱ型60.4、NS41.5)、NSと比較して不完全寛解Ⅰ型、完全寛解、正常コントロールにおいて尿SMPDL3b/尿suPARは有意に低値であった(それぞれP=0.002、P<0.00001、P<0.00001、Dunn検定)。ROC解析による検討では不完全寛解Ⅰ型以上に改善した検体と改善していない検体とを分ける尿SMPDL3b/尿suPARのカットオフ値は約64であった(AUC-ROC:0.75[95%CI:0.72-0.78])。以上の結果から①尿SMPDL3b、尿suPARが原発性NSの病態と関連したバイオマーカーであること、②尿SMPDL3b/尿suPARが原発性NSの病勢指標となることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
世界的なCOVID-19感染症蔓延の影響を受け、発注したELISAキットが海外の製造元から届くまでに時間を要したことが影響し、検体測定がやや遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
日本腎臓学会学術総会(2023年6月開催、横浜)にて現時点までの解析結果を発表予定である。2023年度は検体測定およびデータ収集を完結させ、論文化して学術誌に投稿予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2022年度はELISAキット購入および検体測定が当初の予定よりやや遅れたため、2023年度使用額が生じた。2023年度は検体測定が円滑に進行しており、2022年度測定できなかった検体および2023年度測定予定の検体を測定するELISAキット購入およびその他の消耗品購入等に使用する。
|