研究実績の概要 |
アディポネクチンは抗動脈硬化,抗糖尿病作用などを有する。近年,アディポネクチンが血管内皮細胞を含め遠隔細胞に作用してエクソソーム産生を起こす事が明らかになってきた。本研究では,分子量の異なるアディポネクチンおよびエクソソームが動脈硬化形成に果たす役割を腎不全症例および腎移植患者による臨床データと細胞実験を用いて明らかにする計画である。 本年度は,臨床データを中心に検討を進めた。動脈硬化の進行を3次元的に解析し,定量的な評価を行うことを主体に進めた。倫理審査委員会の承認を受け,28例(女性61%)を対照に,腹部単純CTより動脈硬化の動脈硬化病変と大動脈の体積を3次元的に測定した。 対象者の初回CT撮像時の年齢は,中央値76歳(四分位71,86歳)であり,観察期間は,中央値858日(四分位406,1213日)であった。観察初めの大動脈石灰化体積の中央値は7.4 cm2 (四分位 4.4, 13.5)であり,大動脈の体積は,中央値は76.0 cm2 (四分位 71.5,86.0)であった。一方,最終観察時の大動脈石灰化体積の中央値は10.0cm2 (四分位 6.1, 17.5観察初めの大動脈の体積の中央値は86.7 cm2 (四分位 72.0, 127.9)であった。大動脈体積に占める動脈硬化病変の体積の割合は観察開始時で中央値は7.0% (四分位 4.7, 13.5)であった。また,観察期間内での脈硬化の進行は,1年当たり中央値で0.7% (四分位 0.4, 1.3)であった。 また,アディポネクチンの測定では,高分子,中分子および低分子アディポネクチンは,初回中央値でそれぞれ,45.1, 18.5, 35.8%であり,年率の変化は,それぞれ1.5, 0.6, -1.3%であった。 現在,各アディポネクチンと動脈硬化の進展との連関について解析を行っている。
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