研究実績の概要 |
2020年の申請時には尿検体の収集数が75,000検体だったが、2024年には約150,000検体に増加し、現在も収集を継続している。本研究では、健常者尿と同一の糖尿病患者で微量アルブミン尿が検出される前と検出後の尿を使用し、質量分析装置による定量プロテオミクスを行い、微量アルブミン尿より、早期に腎障害を検出可能なマーカーの探索を行った。その後、選択された早期腎障害マーカー候補タンパク質については取得可能な抗体を使用し、抗体を基盤とした表面プラスモン共鳴(SPR)法による測定系で多検体の尿中タンパク質量を測定し、早期に腎障害を検出可能なマーカーとしての有用性を検証した。 質量分析装置を用いて尿中タンパク質の定量プロテオミクスを行った結果、健常者尿に比して糖尿病性腎症害と判断された患者尿で有意に増加したタンパク質が存在した。また、糖尿病性腎障害と判断された患者尿に比して同一患者の糖尿病性腎障害を起こす一年以上前からの尿で有意に増加していることも確認された。次に、抗体を基盤としてSPR法を用いて尿中タンパク質量を測定した結果、質量分析装置の結果と同様の結果が認められた。今回、質量分析装置で測定した結果とSPR法で測定した結果を比較したところ、SPR法で測定した方が健常者尿と同一患者の糖尿病を伴う微量アルブミン尿が検出される前と検出されたときの尿でタンパク質の測定値に顕著な有意差が認められた。両者の結果の差異は、質量分析装置で測定した場合、すべての検体が0.5 μgで測定されているため、原尿で測定しているSPR法とでは有意差に差が出たと考えられる。現在、質量分析装置で測定した結果について、尿の濃度補正、さらにはクレアチニン補正などを行うことで精度の高い定量プロテオミクスの検討を行っている。
|