研究課題/領域番号 |
21K16192
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
伊藤 聖学 自治医科大学, 医学部, 講師 (10807267)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 慢性腎臓病 / 血液透析 / 脳内低酸素 / 尿毒素 / 透析用内シャント / 認知機能障害 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、脳内酸素代謝が尿毒素物質や透析内用シャントによってどのような影響を受けているのか、さらに脳内局所酸素飽和度(rSO2:regionaloxygen saturation)の低下が認知機能にどのような影響を与えているかについて明らかにすることである。 令和4年度の研究実績として、透析用内シャントを有する血液透析(HD)患者における経皮的血管形成術(PTA)の治療において、PTA治療前と比較し、PTA治療後にはシャント肢上腕動脈血流が増加、およびシャント化静脈への血液の流入が増加した結果、シャント肢手指rSO2が低下するということを見出した。一方でPTA治療の結果、シャント肢の上腕血流が大幅に増加したことに対して、シャント側の頸動脈血流の低下はごくわずかな低下にとどまり、脳内rSO2は低下しなかった(Sugiyama T, Ito K, Ookawara S, et al. Sci rep 2023)という事実を明らかにした。 HD患者は、HD治療に必要な非生理的な透析用内シャントを内在し、さらに生命維持のためのHD治療により、日常的にダイナミックな血流の変化を受けている。それにも関わらず、脳に影響を与える頸動脈血流の変化は、他の部位の血流変化と比較すると小さく、脳内酸素化の変化も認めず、HD患者であっても脳に対する血流・酸素化の影響は最小限にとどめられているという結果であった。このことは生理学的にもHD患者の体内酸素動態に関する重要な知見である。 今後は透析用内シャント作成術前後においても、同様の現象が観察されるかについて、症例を蓄積し、検討を加える予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の時点では、機器のトラブルやCOVID19の影響を受ける形で症例登録が進まない時期もあった。しかしながら、その後は順調に症例の登録が進み、結果についての解析を加えることにとどまらず、結果の一部について論文化まで至った。重要な知見を報告できたと判断しており、「おおむね順調に進展している」と判断した。さらに、得られた研究結果を元に、新しい角度からの検討を開始しており、次年度さらに研究を進めることで、当初の計画以上の知見が得られ、研究成果を上げられる可能性があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、PTA治療を受けた患者について、別の角度からより詳細な解析を加えること、さらに、透析用内シャント作成術を施行した患者における脳内酸素動態の変化について、症例の蓄積を行い、新たな視点から解析を加える予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度はCOVID19感染症の蔓延のため、各種学会等への参加の制限があり、参加できない学会の参加費等、次年度への繰り越しとなった。これらの費用は本研究に関わる必要物品等の購入に充てる予定である。
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