研究実績の概要 |
国民病の一つと考えられる慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)は、現在、根本的な治療法がなく、その発症要因の早期診断と早期介入が必要とされている。申請者は、腎臓の構成単位であるネフロン数を概算することで、単一ネフロン機能を測定することに成功した。 次いで、CKDの進展に共通する病態であるネフロン数減少と糸球体過剰濾過の評価を行い、CKDにおける糸球体代償性機能の破綻を見出した。 本研究では、ネフロン数と糸球体過剰濾過の業績を発展させ、糸球体過剰濾過における糸球体内皮細胞の機械的刺激“メカニカルストレス”に着目し、ネフロン数減少に伴う糸球体血行動態の変化に応じた内皮細胞障害およびCKDの進展機序を解明することを目的とした。 現在は主にヒトの腎生検検体を用いて、ネフロン数を算出するとともに、糸球体過剰濾過による内皮細胞障害を同定することを試みており、正体移植腎ドナー56例を対象とした. 糸球体内圧(pglom), 輸出入細動脈圧をGomezの式より算出した。傾向検定を用いPglomの値で3群間 (low, intermediate, high) における各因子の傾向を分析した. 結果として、対象は年齢 56.8 ± 10.1 歳, 男性30.4%、収縮期血圧 123.6 ± 18.6 mmHg, 拡張期血圧 73.1 ± 14.1 mmHg, GFR 75.1 ± 19.3 mL/分, Nglom 798,107 ± 390,430 /腎 であった. PglomはSNGFRと正相関(r=0.41, P<0.001)を示し、3群間の検討において、年齢や血圧値との関連は認めなかったものの、糸球体容積, 濾過率, SNGFR, Ra, Re, 尿蛋白量と有意な関連を認めた。 本研究により、初めて生体腎におけるは単一糸球体あたりの血行動態を示すことが出来た。またPglomの上昇は、SNGFRの上昇、糸球体腫大、尿蛋白量増加と関連を示し、Brenner仮説を支持する結果となった。
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