研究実績の概要 |
国民病の一つと考えられる慢性腎臓病(chronic kidney disease: CKD)は、現在、根本的な治療法がなく、その発症要因の早期診断と早期介入が必要とされている。申請者は、腎臓の構成単位であるネフロン数を概算することで、単一ネフロン機能を測定することに成功した。次いで、CKDの進展に共通する病態であるネフロン数減少と糸球体過剰濾過の評価を行い、CKDにおける糸球体代償性機能の破綻を見出した。 本研究では、ネフロン数と糸球体過剰濾過の業績を発展させ、糸球体過剰濾過における糸球体内皮細胞の機械的刺激“メカニカルストレス”に着目し、ネフロン数減少に伴う糸球体血行動態の変化に応じた内皮細胞障害およびCKDの進展機序を解明することを目的とした。 現在は主にヒトの腎生検検体を用いて、ネフロン数を算出するとともに、糸球体過剰濾過による内皮細胞障害を同定することを試みている。 ヒトによる検討では、糸球体内圧は単一糸球体濾過量と正相関を示し、糸球体容積, 濾過率, Ra, Re, 尿蛋白量と有意な関連を認めた。 一方、糖尿病性腎症(DKD)モデルの検討においては、血液尿生化学検査、腎臓の病理組織学的観察、遺伝子発現解析、in situ hybridization法を用いてPiezo2の発現局在の同定を試みている。 これら研究成果によって、ヒト腎生検検体におけるPiezo2発現を評価し、腎予後因子の確立や治療介入の研究へ発展させていく次第である。
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