メラノーマの皮膚病変切除後に行った追加切除標本にみられるメラノーマ『様」細胞が,メラノーマの取り残しなのか,メラノーマの早期再発病変なのか,外科的侵襲による反応性変化なのかを明らかにするため,R3年度にメラノーマ『様』細胞を確認した3症例(表皮内病変2例,浸潤例1例)について病理組織学的検討を行ったところ,3症例いずれも1~2カ月後に施行した追加切除標本の表皮内に異型メラノサイトの増生を確認した。この細胞について,免疫組織化学染色を追加したところ,全例で追加切除標本の中心側(初回切除瘢痕周囲)の表皮内にMelan Aで陽性を示す細胞が観察された。メラノーマ『様』細胞が発生部位,深達度の違う複数の症例で確認できたため,追加でメラノーマの診断に用いられるSox10による免疫組織化学染色を追加で行った.3症例全てで初回切除標本における腫瘍細胞は陽性を示したが,追加切除標本ではMelan A染色で確認し得た細胞と陽性所見が必ずしも一致しなかった.そのため初回切除時のメラノーマ細胞とメラノーマ『様』細胞の遺伝子変異を比較するため,①初回切除標本と②追加切除標本のパラフィンブロックから遺伝子を抽出し全ゲノム解析を行うことを試みた.①は切片内に腫瘍が塊状に存在しているが,②に存在しているメラノーマ『様』細胞数は非常に少なく,現在のところ遺伝子の抽出に難渋しており,症例を増やし抽出法を再検討している.今後追加した症例で解析を進め,メラノーマ『様』細胞遺伝子内に見られた特異的かつ病的な変異を,マウスメラノサイトにノックインしたノックイン・メラノサイトを作成し,その遺伝子の機能を解析する予定である.
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