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2021 年度 実施状況報告書

重症薬疹の病態解明と新規バイオマーカーの開発

研究課題

研究課題/領域番号 21K16205
研究機関新潟大学

研究代表者

長谷川 瑛人  新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (90749574)

研究期間 (年度) 2021-04-01 – 2023-03-31
キーワード重症薬疹 / 細胞死 / ネクロプトーシス / パイロトーシス / インフラマゾーム
研究実績の概要

スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)や中毒性表皮壊死症(TEN)は、広範囲のびらん
を特徴とする、重篤な薬疹である。SJS/TENでは、表皮細胞がアポトーシスやネクロプトーシスというタイプの細胞死を起こす。このアポトーシス経路とネクロプトーシス経路は、インフラマゾーム経路と互いに関与し合う。インフラマゾーム経路は、caspase 1が活性化することで、IL-1βやIL-18を細胞外へ放出されることで周囲に炎症を起こす。またcaspase 1の活性化によりgasdermin Dが切断され活性化し、パイロトーシスという細胞死を引き起こす。
本研究は、SJS/TENの病態にインフラマゾーム経路が関与するかを解明する。SJS/TENの
病態を新たに解明することで、早期診断、重症度予測のための、新規バイオマーカーの開発
を目指す。そのために①細胞モデルを用いた解析、②multiplex assayを用いた網羅的解析を計画している。
本年度はまず、SJS/TENの病変部の表皮細胞で実際にパイロトーシスが起きているかどうか解析した。病変部の表皮細胞で、活性型gasdermin Dが検出されたことから、SJS/TENの病変部でパイロトーシスが起きていることを確認できた。次に、インフラマゾーム経路がアポトーシス、ネクロプトーシスの経路と相互に作用しあって起きているのか、または独立して起きているかなどを解析するために、SJS/TENのモデル細胞の作製を行った。不死化表皮細胞であるHaCaT細胞にP2X7受容体刺激とFPR1刺激を加えることで細胞死を誘導できるモデル細胞の作製に成功した。今後はこのモデル細胞を用いてインフラマゾーム経路の活性化やその他の経路との関連の解析を行う予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究では、SJS/TENの病態にインフラマゾーム経路が関与しているかを解析し、新規のバイオマーカー探索を目標としている。本研究は①細胞モデルを用いた解析、②multiplex assayの2つの要素から構成される。本年度は本研究課題の初年度である。主にSJS/TENの病変部皮膚でパイロトーシスが起きているかの確認と、SJS/TEN細胞モデルの作製を行った。
本研究の事前検討にて、SJS/TEN患者の病変部皮膚において、活性型caspase 1が検出されることを見出し、インフラマゾーム経路が病態に関与している可能性があることを確認している。今回我々は、同様にSJS/TEN患者の病変部皮膚から、活性型のgasdermin Dが検出されることを確認し、SJS/TENの表皮細胞死にはアポトーシスやネクロプトーシス以外にパイロトーシスも混じていること見出した。我々は過去の研究で、表皮細胞にSJS/TEN患者急性期の血清を添加すると細胞死を誘導できることを明らかにしている。このSJS/TEN血清を添加したHaCaTにおいて、同様にgasdermin Dが活性化していることを見出した。以上より、SJS/TENでみられる表皮細胞の細胞死に、パイロトーシスが関与していることを患者検体、培養細胞の両方から確認することができた。
次にSJS/TENの病態解明のためにSJS/TENモデル細胞の作製を行った。SJS/TENの病態には単球が放出するAnnexin A1が表皮細胞のFPR1に結合することで起こるnecroptosisが重要である。このFPR1発現の上昇は、好中球が放出するLL-37のP2X7受容体刺激による。HaCaT細胞にP2X7受容体刺激とFPR1刺激を加えることで細胞死を誘導できた。
本年度の研究により、SJS/TENモデル細胞を構築まで到達しており、おおむね順調に進捗している。

今後の研究の推進方策

本年度の研究で、SJS/TENモデル細胞の構築までは到達している。今後は、作製したモデル細胞を用いて、caspase-1、NLRP3、AIM2、IL-1β、IL-18などのインフラマゾーム関連分子などの発現量や活性化の状態を解析する。また、インフラマゾーム、アポトーシス、ネクロプトーシスの各経路がどのように調整されているか解析する。これらの調節にはtak-1やcaspase 8が関与していることが知られており、本研究でもこれらの調節因子の発現量やリン酸化、cleavageなどの活性化の状態がどのように変化しているかを解析する。
また、SJS/TEN患者血清からmultiplex assayを用いてインフラマゾーム関連分子を含め、多数の項目を網羅的に解析する。発症時、悪化時、回復期など、各病期におけるサイトカインなどの分子の推移のパターンを解析し、病態の時間的な変遷の解明を目指す。候補となるマーカーについては、ELISA法でも発現の上昇を確認する。複数の項目を組み合わせて解析することで、より正確に病期や重症度の予測が可能になると期待できる。

次年度使用額が生じた理由

次年度には、作製したモデル細胞を用いてインフラマゾームの解析を行う予定である。caspase-1、NLRP3、AIM2、IL-1β、IL-18などのインフラマゾーム関連分子、tak-1やcaspase 8などの経路の調節因子をウエスタンブロット、細胞染色、リアルタイムPCRなどで解析する。そのために、抗体や、ELISAキットなどが必要である。
また、SJS/TEN患者血清からmultiplex assayを用いてインフラマゾーム関連分子を含め、多数の項目を網羅的に解析する。Multiplex assayのキットが必要になる。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] Formyl peptide receptor 1 triggers cell death signals in leratinocyte as SJS/TEN model2021

    • 著者名/発表者名
      Tomoki Nishiguchi
    • 学会等名
      The 46th Annual Meeting of the Japanese Society for Investigative Dermatology
    • 国際学会

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公開日: 2022-12-28  

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