本研究では、申請者らが角化異常症や炎症性皮膚疾患において検討を進めてきた上皮細胞の分化と抗炎症作用を併せ持つ分泌蛋白デルモカインに着目して実験を進めている。DMKNは黒色腫の病態において、細胞増殖能や腫瘍免疫、上皮間葉転換を介して増殖、転移に関与していると推定され、本研究ではさらに詳細なメカニズムを解明を進めている。 まずは、当教室で保存した豊富な悪性黒色腫の臨床データと組織や血清などを活用し、血清中や腫瘍周囲に発現するDMKNが、黒色腫の重症度、病勢、治療反応性を反映するバイオマーカーとしての有用性示すか解析を行った。しかし、これまでの臨床データから、悪性黒色腫患者の血清中DMKN濃度は一般的に総じて低く、高値の患者がいても皮膚炎などと合併していることが多く、悪性黒色腫の重症度、病勢など相関している証拠はまだ得られていない。また、現在、血中DMKN濃度と治療反応性の相関に注目して解析を行っている。同時、臨床病理標本のDMKN免染を進めており、病理DMKNと悪性黒色腫に相関があるのか解析を進めている。 また、マウスモデルの実験も進めており、F10メラノーマ細胞の皮下投与系、肺転移系でDMKN KOマウスで、有意に増殖能、転移能の抑制がみられた。現在、マウスDMKNa蛋白の精製を行っており、まずは細胞培養系に使用する予定である。
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