研究課題
慢性炎症性皮膚疾患であるアトピー性皮膚炎・乾癬患者の表皮ケラチノサイトのクローン進化を正常皮膚と比較することを目的とした。微小サンプル、レーザーマイクロダイセクション、単細胞由来コロニーの3つの方法で表皮ケラチノサイトの体細胞変異を解析した。微小サンプル、レーザーマイクロダイセクションの解析では、正常皮膚ではケラチノサイトのクローンは皮膚の幅に換算して50um以下であり、最小のものは10um以下であった。したがって自己複製できる表皮ケラチノサイトが単一の細胞として存在していることが示唆された。一方、炎症性皮膚疾患では皮膚の幅に換算して100umを占めるクローンが多発しており、慢性炎症性皮膚疾患において表皮ケラチノサイトのクローン拡大が進んでいることが示された。正常皮膚・皮膚有棘細胞がんで報告のあるドライバー変異の陽性選択が検出された。アトピー性皮膚炎におけるクローン拡大はドライバー変異を伴っていない一方、乾癬はドライバー変異の頻度が高かった。慢性炎症性皮膚疾患の存在が表皮ケラチノサイトの選択を変容させていることが示唆された。単細胞由来コロニーの解析で、慢性的な日光暴露のない正常皮膚では加齢に伴い一定速度(エクソームで0.21変異/年、全ゲノムで18変異/年)で変異が蓄積することを決定した。日光暴露した正常皮膚・一部の炎症性皮膚疾患では年齢に不相応な高い変異数を示した。それらはほとんどが紫外線由来の変異シグネチャーの蓄積で説明された。炎症性皮膚疾患由来のコロニーの大半は、正常皮膚と同程度の変異数を示した。慢性炎症性皮膚疾患が皮膚ケラチノサイトのクローン拡大を促進し、特に乾癬ではがんドライバーを有するクローン拡大を促進していることが示唆された。
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