研究実績の概要 |
皮膚は生体を外界と隔てる最大の臓器であり、病原微生物や抗原などに常にさらされている。そのため、皮膚にはさまざまな免疫細胞が存在しており、それぞれの細胞が相互作用することで、外来抗原に対応した皮膚炎反応が誘導される。例えば、感染症や接触皮膚炎では1型T細胞、アトピー性皮膚炎では2型T細胞、乾癬では17型T細胞により炎症が引き起こされる。抗原提示細胞は自然免疫と適応免疫の橋渡しとして働き、炎症性皮膚疾患においてこのT細胞を介した反応を促進する重要な役割を担っていると考えられている。しかし、皮膚抗原提示細胞分画の特徴や、疾患の発症あるいは維持への寄与については、未だ明らかにされていない。そこで、我々は、炎症性皮膚患者の皮膚病変部における抗原提示細胞分画の特徴を明らかにするために、1細胞RNAシークエンスを行った。フローサイトメトリー解析と1細胞RNAシークエンス解析を組み合わせ、ヒト皮膚樹状細胞をDC1(CD141+, XCR1+), DC2(CD1C+, CD14-), DC3(CD1C+, CD14+, CD88-), 活性化DC (LAMP3+, BIRC3+)の4つの集団に、マクロファージをCCR1陽性、MARCO陽性、TREM2陽性マクロファージの3つの集団に分類した。活性化DCはアトピー性皮膚炎と乾癬でともに増加しており、皮膚炎に重要なIL-15を産生していた。DC3は乾癬でのみ増加し、乾癬発症に必須のIL-1B と IL-23A を産生していた。これらの結果は、新たに同定された活性化DCやDC3が炎症性皮膚疾患に極めて重要な役割を担っている可能性を示唆している。
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