研究実績の概要 |
頭部血管肉腫患者の血漿検体のメタボロミクスを行い、悪性黒色腫および乳房外パジェット病の患者群と比較し、L-グルタミン酸が有意に上昇していることが明らかとなった。L-グルタミン酸が血管肉腫の増殖に関与している可能性を考慮し、L-グルタミンをL-グルタミン酸に変換する酵素であるglutaminase 1; GLS 1に着目した。 ヒト血管肉腫細胞株(ISO-HAS-B, MO-LAS-B)、マウス 類上皮血管内皮腫細胞株(EOMA)の増殖がGLS 1阻害剤(CB-839もしくはBPTES)の添加により有意に抑制されることをColony formation assayおよびWST-8 assayを用いて示した。更に、L-グルタミン酸の存在下ではこれらの増殖抑制が解除されることを示し、GLS 1阻害剤が増殖を抑制する機序に、L-グルタミン酸の欠乏が関与していることが解明された。 GLS 1阻害剤により増殖が抑制される機序を更に解明する目的で、マイクロアレイを用いてISO-HAS-BにCB-839を添加することで変化するmRNA発現を網羅的に解析し、発現が有意に上昇したのがHMGB3, NUPR1, ASNS, CHAC1、発現が有意に低下したのがCDH15, CACNA1G-AS1, HSPA8, CELF2-AS2 であった。 血管肉腫患者の腫瘍検体でのGLS免疫染色では腫瘍細胞の細胞質に陽性であったが、同一検体において正常血管内皮細胞では陰性であり、腫瘍化することでGLSの蛋白発現が上昇しその結果L-グルタミン酸への代謝が亢進しそれが腫瘍増殖に寄与する可能性が示唆された。
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