研究課題
化膿性汗腺炎は、腋窩や鼠径部、臀部などの終毛性毛包に生じた炎症が、皮下硬結や瘻孔を形成し、組織破壊的に線維化の強い瘢痕へ進行する慢性に経過する好中球性の炎症性皮膚疾患である。乾癬等と同様に自己炎症性疾患と考えられ、抗TNFαや抗IL-17製剤の有効性が知られるが、不応例や改善後も瘢痕を残す症例も多く、その病態は明らかではない。特に慢性期病変における線維化の機序についてはほとんど解明されていない。本研究の目的は、化膿性汗腺炎の治療対象となりうる病態の本質を見いだすことである。その選択手法として、類縁疾患である尋常性乾癬や壊疽性膿皮症を疾患コントロールとし、病変組織のトランスクリプトームと、シングルセルRNAシークエンスによる網羅的発現解析により、これらに共通する炎症病態と、各々の疾患の独自性を解明する。病変部皮膚検体を用いたトランスクリプトーム解析において、化膿性汗腺炎の病変部では、乾癬や他の好中球性皮膚症と比較して、CTGFやコラーゲン14、エラスチン遺伝子が高発現するなどの独自の遺伝子発現を見いだし、疾患特異的な線維化を解明すべく手掛かりをえた。その結果をもとに免疫染色を行ったところ、化膿性汗腺炎の病変部においてあるB細胞の一群がCTGFを産生していることを見出した。さらに、ヒト線維芽細胞に今回の予備解析で見出したCTGFやTGFβ3などのサイトカインを添加し、化膿性汗腺炎に特徴的なコラーゲン群や弾性線維、MMPsなどの発現が亢進するか、リアルタイムPCR法を用いて確認したところ、化膿性汗腺炎に特徴的な遺伝子の発現亢進がみられた。
3: やや遅れている
病変部皮膚のシングルセル解析のための検体調整に時間を要している。具体的には、壊死組織が多く解析に必要な生細胞率が低いため、シングルセル化の手法について検討を行っているところである。
壊死組織の多い病変部皮膚のシングルセル化の実験系を確立する。シングルセル解析の結果をもとにリアルタイムPCR、免疫染色やウエスタンブロットを行い結果の検証を進める。
シングルセル解析のための費用を計上していたが、検体の調整が難航しており解析まで進めず、その費用を次年度に繰り越した。
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皮膚病診療
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10.1002/cia2.12187