最終年度は本研究を進めていく上で疑問となった可溶型CD83の分泌機構について研究を実施した。我々は、膜貫通タンパクの細胞外ドメインを切断して可溶型タンパクに翻訳後修飾する機能を持つADAMがこの分泌メカニズムに関連している可能性を考え、検討を進めてきた。健康成人の末梢血単核細胞からCD14+単球を分離し、in vitroで成熟樹状細胞を誘導すると培養上清中に可溶型CD83が検出されるが、培養細胞にADAM10 inhibitorであるGI254023Xを処理すると有意に可溶型CD83の発現量が低下した。さらに、CD83 geneを組み込んだplasmid vectorをHEK293細胞にtransfectionしたところ、培養上清中に可溶型CD83の分泌が認められたが、GI254023Xの投与およびADAM10 siRNAのco-transfectionによって、可溶型CD83の分泌能が低下した。これらの結果から、ADAM10が可溶型CD83の分泌に関連している可能性を示唆した。 研究期間全体を通じて、Th17細胞とCD8+T細胞の相互作用に着目し、乾癬の病態への関連性について検討を行ってきた。乾癬患者の末梢血ではMCAM+CD161-Th17細胞の割合が健康成人のものと比較して有意に高く、さらに乾癬の重症度指標であるPASI scoreと有意な正の相関関係にあることから、乾癬において病的なTh17細胞サブセットであることが推察された。さらに、当該サブセットに特異的にCD8+T細胞の活性化にかかわる分子であるCD83遺伝子が発現していることをbulk-RNA sequencingによって明らかにし、これがTh17細胞とCD8+T細胞との相互作用に関連していることをCD83 inhibitorを用いたin vitroによる検討によって証明した。
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