研究課題/領域番号 |
21K16219
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
前田 拓 北海道大学, 医学研究院, 助教 (80813542)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 悪性黒色腫 / メラノーマ / 腫瘍溶解性ウイルス / 単純ヘルペスウイルス / 抗PD-1抗体 / 併用療法 / 免疫賦活化 |
研究実績の概要 |
悪性黒色腫はメラノサイト由来の悪性腫瘍であり、その転移率の高さから進行期の予後は極めて不良である。近年、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬などの登場によって、メラノーマの薬物療法は飛躍的に進歩した。これらの薬剤は術後補助療法のみならず、これまで有効な治療法のなかった遠隔転移に対しても一定の効果が認められ、その重要性は今後もますます高まっていくと考えられる。薬物療法の奏効率を高めるために、最適な併用療法が模索される一方で、薬剤の副作用は解決すべき大きな問題である。 いま新たな癌治療法として注目を集めている腫瘍溶解性ウイルスは、癌細胞選択的に感染・増殖し、内部から細胞を破壊する。正常細胞内では増殖しないため、重大な副作用がないとされる。さらに、宿主の抗腫瘍免疫活性を賦活化させることで、直接ウイルスを投与していない腫瘍に対しても治療効果を発揮することが示唆されている。2017年には腫瘍溶解性ウイルスと抗Programmed cell death protein 1 (PD-1)抗体の併用療法の有用性が報告された。腫瘍溶解性ウイルスは、併用療法の副作用の問題を軽減しつつ、抗腫瘍効果を高めることができる新たな治療の選択肢として大きな期待が寄せられている。 本研究は、腫瘍溶解性ウイルスと抗PD-1抗体の併用により、センチネルリンパ節や脾臓においてどのような変化が生じるかを検証し、腫瘍溶解性ウイルスの免疫賦活化の機序を詳細に検討することを目的とする。マウスにメラノーマを播種したモデルに各種薬剤を投与し、腫瘍のサイズ、肺・鼠径リンパ節・腋窩リンパ節への遠隔転移、膝窩リンパ節・脾臓のリンパ球分布・遺伝子発現の変化を解析することで、腫瘍溶解性ウイルスと免疫チェックポイント阻害薬の併用療法による免疫賦活化を証明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、腫瘍溶解性ウイルスの手配と感染実験を行うための体制を整えた。タカラバイオ株式会社と試料提供契約を締結し、腫瘍溶解性ウイルスとして単純ヘルペスウイルス1型の弱毒化株であるC-REV(Canerpaturev)の供与を受けた。また、ウイルスの保管を行うために、実験室の設備を整えてバイオセーフティーレベル(BSL)をレベル2に引き上げた。これらの各種申請の手続き・承認に予想よりも時間を要したため、進捗状況としてはやや遅れていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍溶解性ウイルスとして単純ヘルペスウイルス1型の弱毒化株であるC-REV(Canerpaturev)、抗PD-1抗体としてPembrolizumabを用いる。C57BL/6Nマウスの後肢foot padにメラノーマ細胞B16F10Luc2を移植後、Group A: PBS/PBS、Group B: C-REV/PBS、Group C: PBS/Pembrolizumab、Group D: C-REV/Pembrolizumabの各群に分け、各種薬剤を投与する。腫瘍のサイズを肉眼的・in vivo imagingで評価する。鼠径リンパ節、腋窩リンパ節、肺を摘出し、ルシフェラーゼアッセイを行う。センチネルリンパ節である膝窩リンパ節を摘出し、リンパ球数の測定、免疫組織学的評価、リアルタイムPCRによるサイトカイン定量、フローサイトメトリーによるリンパ球分布の解析を行う。脾臓を摘出し、フローサイトメトリーによるリンパ球分布の解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は実験の前準備に時間を要したことに加え、腫瘍溶解性ウイルスは無償で提供を受けられることになったため、購入費として考えていた分の予算に余裕が生じた。予算はマウスおよび抗PD-1抗体、各種プライマー、モノクローナル抗体等の購入に使用する予定である。
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