メラノーマはメラノサイト由来の悪性腫瘍であり、その転移率の高さから進行期の予後は極めて不良である。近年、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬などの登場によって、メラノーマの薬物療法は飛躍的に進歩した。これらの薬剤は術後補助療法のみならず、これまで有効な治療法のなかった遠隔転移に対しても一定の効果が認められ、その重要性は今後もますます高まっていくと考えられる。薬物療法の奏効率を高めるために、最適な併用療法が模索される一方で、薬剤の副作用は解決すべき大きな問題である。 腫瘍溶解性ウイルスは、癌細胞選択的に感染・増殖し、内部から細胞を破壊する。正常細胞内では増殖しないため、重大な副作用がないとされる。さらに、宿主の抗腫瘍免疫活性を賦活化させることで、直接ウイルスを投与していない腫瘍に対しても治療効果を発揮することが示唆されている。2017年には腫瘍溶解性ウイルスと抗PD-1抗体の併用療法の有用性が報告された。 本研究は、腫瘍溶解性ウイルスと抗Programmed cell death protein 1 (PD-1)抗体の併用により、センチネルリンパ節や脾臓においてどのような変化が生じるかを検証し、腫瘍溶解性ウイルスの免疫賦活化の機序を詳細に検討することを目的とする。 メラノーマ株としてClone M-3、腫瘍溶解性ウイルスとして単純ヘルペスウイルス1型の弱毒化株であるCanerpaturev(C-REV、Takarabio)を用いて、in vitroでは蛍光免疫染色による感染性の確認を行い、in vivoではマウスメラノーマモデルの作成とリンパ節・脾臓の採取を行った。採取したリンパ節および脾臓を用いてフローサイトメトリーによるリンパ球分画変化の解析を行った。
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