研究課題/領域番号 |
21K16221
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
山本 洋輔 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (40645628)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 悪性黒色腫 / メチル化 |
研究実績の概要 |
悪性黒色腫におけるエピゲノム、特にDNA異常メチル化とゲノム変異の関連、また治療標的となりうる責任遺伝子を解明するにあたり2021年度は以下の項目について検討を行った。 研究対象の悪性黒色腫臨床検体77例よりDNAを抽出し、網羅的メチル化解析を施行した。次世代シークエンサーを利用して、ゲノム全体のCpGアイランドの96%をカバーする約45万か所のCpGサイトのDNAメチル化の定量解析を行った。プロモーター領域のCpGサイトのメチル化に注目しクラスタリング解析することにより悪性黒色腫症例を低メチル化群と高メチル化群の2群に層別化した。それぞれの群とドライバー遺伝子変異の頻度には相関がなかったのものの、高メチル化群ではTumor thicknessが厚く、予後が悪いという臨床的特徴と相関することを解明した。また、それら層毎に有意にメチル化がみられる候補遺伝子を抽出した。既報にてメチル化が転移に関連すると報告される遺伝子を含む複数の候補遺伝子が抽出された。検体のうち51例についてはがん遺伝子パネル検査により275種類のがん関連遺伝子のターゲットエクソン解析を施行した。DNA異常メチル化の情報と統合することによって、上記により層別化された低メチル化群に有意に高頻度に変異がみられる遺伝子が同定された。Cosmicのmutation signature解析も施行し、臨床検体より発見された遺伝子変異のmutation signatureのパターンが同定された。いくつかの候補遺伝子については悪性黒色腫細胞株を用いた実験により脱メチル化薬であるアザシチジンや、ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬であるトリコスタチンAにより発現が回復することを確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた臨床検体からのDNA抽出、網羅的メチル化解析、ターゲットエクソン解析については施行されており、結果データの解析にも着手している。DNA異常メチル化に関する解析に比べ、ゲノム異常の解析の進捗は少なく、今後の課題である。現在の取得検体数は予定検体数に比べると施行済み検体は一部であり、今後の症例集積が望まれる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果として、遺伝子のDNA異常メチル化に着目することにより臨床検体が層別化され、臨床症状との相関も見られた。またそれら層別化に相関する遺伝子異常についても同定された。 今後の研究推進として引き続き研究対象となる症例を集積していく。並行して上記層別化群により変異の頻度に差の見られる遺伝子の抽出、機能解析に関する実験についても推進していく。
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