研究実績の概要 |
Stevens-Johnson症候群(SJS)/中毒性表皮壊死症(TEN) 初期において、活性化した好中球が表皮内に浸潤し、Neutrophil extracellular traps (NETs) を形成することで、表皮細胞死が惹起することを報告している(Kinoshita M, Ogawa Y, Abe R, and Kawamura T et al., Science Translational Medicine, 2021)。 SJS/TENの既存治療薬がNETsを中心とする病態にどのように作用するかを明らかにするため、本研究ではまずSJS/TEN 患者血清で誘導される NETs が、SJS/TENの世界的標準治療薬である 副腎皮質ホルモン(デキサメタゾン)、免疫抑制剤(シクロスポリン)、抗TNF-α抗体 によって抑制されるか否かをin vitroで検討した。 具体的には健常人由来の好中球にSJS/TEN患者血清を添加して培養し、免疫染色にてNETs形成を観察する実験系を用いた。SJS/TEN血清刺激によるNETs形成は、薬剤血中濃度と同濃度のデキサメタゾン、シクロスポリン、抗TNF-α抗体のいずれによっても抑制されなかった。 そこで、内因性NETs分解酵素であるDNasesに着目した。循環中で作用することが知られているDNase1, DNase1-Like3はNETsを効率的に分解した。 さらに、SJS/TEN患者血清中のDNase1やDNase1-Like3濃度は、健常人、播種状紅斑丘疹型薬疹、薬剤性過敏症症候群、全身性エリテマトーデス、尋常性乾癬などと比較して有意に低下していた。
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