研究課題/領域番号 |
21K16225
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
福地 健祐 浜松医科大学, 医学部附属病院, 助教 (60897346)
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研究期間 (年度) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | IL4I1 / トリプトファン代謝産物 / 免疫チェックポイント阻害薬 |
研究実績の概要 |
2021年度は、まず、対象患者の追加を行った。免疫チェックポイント阻害薬治療予定の患者から同意を取得し、新たに8名が参加した。この8名に対し、投与前、初回投与後、投与開始2ヶ月後の3回末梢血採血を行なった。回収した末梢血は遠心分離し、血漿、血清、末梢血単核球に分離しそれぞれ保存した。 3回すべての検体採取を実施した6名に対し、得られた血漿を用いてトリプトファン(Trp)とその代謝産物の濃度を、外部機関(島津製作所)に依頼し行った。島津製作所では、タンデム質量分析を備えた液体クロマトグラフィーを使用して血漿中Trpとその代謝産物を包括的に測定した。 今年度得られた6名のデータは、既に得ていた6名分のデータと合わせ解析を行った。測定したTrp代謝産物のうち、キヌレイン(Kyn)、キヌレイン酸(KynA)、3-インドール酪酸(3IAA)、インドール-3-酢酸(IBA)4つに注目した。キヌレインとキヌレイン酸はIndole-amine-2,3-dioxygenase、3-インドール酪酸とインドール-3-酢酸はinterleukin-4-induced-1という酵素による代謝を経た代謝産物であり、この2つの代謝酵素はトリプトファン代謝の2つの主要な代謝経路の根幹をなす。そして、この2つの代謝経路による代謝産物は、腫瘍免疫の抑制に関わるとされる。そのため、それぞれの代謝産物をトリプトファン濃度との比で表し、2つの代謝経路の活性化を表す指標とみなした。 Kyn/Trp、KynA/Trp、3IAA/TrpそしてIBA/Trpを治療効果有無によって2郡に割り付け、T検定を用いて統計解析を行った。投与前、初回投与後、投与開始2ヶ月後ではいずれも奏功郡と非奏功郡との間に有意差はなかった。今回は少数例での検討であったため、引き続き症例数を増やし、解析をすすめていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験の第1段階として、トリプトファン代謝とIL4I1発現、そして治療効果につき少数ながらまとまったデータが得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に解析した症例につき、治療効果と末梢血中のトリプトファン代謝産物の濃度や原発巣におけるIL4I1発現との関係を解析する予定である。同時に新たな症例の集積も進め、データを増やしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
おおむね予定通り進めているが、受領額と支出額の間に多少の差が生じた。今後追加の免疫染色や末梢血単核球のフローサイトメトリー解析を行う予定であり、今年度生じた差額については来年度使用する。
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